70年代の最先端エレクトロニックポップ【アナログで聴きたい名盤】
【アウトバーン/クラフトワーク(1974年)】 アナログの時代が1980年代後半に終えんを告げ、CDの時代に移行して40年以上を経た現在は、ストリーミングが中心となっている。アナログ中心の70年代に技術的に最先端を走っていたのが、ドイツのシンセサイザーグループでテクノポップの元祖・クラフトワークだ。「アウトバーン」は4枚目のアルバムでバンドを世界的地位へ押し上げた傑作である。 もともとは現代音楽のジャンルに属する電子音楽を演奏していたが、各種機材や演奏方法をポップスに持ち込み、エレクトロニック・ポップというジャンルを完成させ、多くのミュージシャンにも多大な影響を与えた。 A面全部を使った「アウトバーン」は22分以上の大作。穏やかでのびやかな音空間に、決して出過ぎないシンセサイザーが広がり「Wir fahrn’ fahrn’’ fahrn’’ auf der Autobahn」のドイツ語のコーラスが延々と心地よく続く。 まさに「音に身を任せる」曲だったが、ドイツ語に慣れていない日本人には「ファン・ファン・ファン」としか聞こえず、やはりビーチ・ボーイズのパロディーを意識していたようだ。当時は最も近未来を感じさせると同時に人間っぽさを消し「ロボット的」印象を与えたクールなグループだった。 時代は変遷し、コンピューターが一般化した今では、このアルバムをアナログで聴くと、未来と現在が逆転したような妙な懐かしさに浸ってしまい、逆に人間っぽさを感じてしまう。やっぱり音楽って不思議だ。
東スポWEB