「この年齢になったからやれる役もある」加藤和樹(40)が舞台人として目指すもの
普段の多く演じる役柄とは大きく異なるポールという役を楽しみながら演じているという加藤和樹さん。コメディ作品への出演も含め、幅の広い作品、そして役柄選びはファンならずとも気になるところ。インタビュー後編では加藤さんの作品選びや役作りについて伺ったほか、プライベートでの毎日の過ごし方についてもお伺い。夏休みに行ったところとは……? 【最新画像を見る】加藤和樹(40)が舞台人として目指すもの
信念は、役を自分に近づけるという役作り
――加藤さんは本当に幅広い役柄に挑戦されていますが、作品選びや役作りなどに関して、ご自身のルールなどがあれば教えてください。 僕の基準は自分が本当にやりたいかやりたくないかという感じなので、やりたいと思ったらやっぱりやりたいし、でもその中でも確実に「これは絶対自分には合わないかも」と思うものはお断りしたりします。 基本的にはお話をいただいたときは、一度脚本を読ませていただき、まずは作品にどんな魅力があるか、自分の役がどんな役割を持っていて、どういう人物なのかというところで興味が湧くか。演じていくうえでは、役者なので演じるだけなのですが、自分から遠ければ遠い人物像であるほど面白いですね。 ――以前お話を伺った際に、「役柄に、自分と同じものを探さない」と仰っていました。ご自身から遠ければ遠いほど、やりがいがあるという感じでしょうか。 僕の役作りの方法というか、ひとつ大事にしていることがありまして。演出家の白井晃さんから言われたのですが、「自分が役に近づくのではなく、その役を自分に近づけるんだ」ということです。似ているようで、全然違うんですよ。結局、“自分”というフィルターを通して演じるので、自分が役に近づいてしまうと、自分とはかけ離れたものになってしまうんです。 ――ご出演中の『裸足で散歩』に限らず、コメディ作品を舞台で上演されるときに意識されていることや課題に思われていることはありますか? どうしてもお客さんを意識してしまうというのが課題ですかね。コメディとお笑いの違いってなんだろう、と……。お笑いはお客さんを笑わせる仕事。一方で、我々はコメディというジャンルの作品をお客さんに届けるだけで、決して笑わせようとしているわけではありません。大爆笑が起こるわけでもないですし……。本当に、そういうところの匙加減が難しい。役者が演じながら笑いを取りに行ってはダメですから。 笑いを取りに行くというのは、もう役じゃなくて、役の中の自分の感情なんです。舞台の上で生きている人たちは、笑わせようと思って生きてないんですよ。若いときはどうしても欲しがっちゃって、「お客さんに笑ってほしい」と思ったときもありましたが、それは個人的な感情であって、お芝居には不要なものだと思うようになりました。ここで笑わせたいから面白いことをします、というのではなく、酔っぱらっている演技の状態でこうやるから面白い、という結果になればいいなって思いますね。 でもね、やっぱり笑ってもらえるのってすごく気持ちよくって。あ、これはちょっとダメだわ。クセになっちゃう……というのはあります(笑)。でも、お芝居の台本自体が面白い作りになっているので、基本的にはそれ通りにやれば面白いはずなんですよ。 ――加藤さんは役柄的に“泣かせる系”の役や作品も多いと思います。そっちよりも笑わせるほうが気持ちいいですか? (笑) 気持ちいいですね(笑)。泣かせるお芝居というのが、これがまた難しくて。でももちろん、「泣かせよう!」というふうには思ってないですから……。そこはちょっと“笑い”とは違う部分で、こちらが真剣に、感情的になればお客さんももちろん泣けると思うのですが、これも笑いと一緒で狙いすぎるとダメなんですよね。自分に酔っちゃうとお客さんって冷めちゃうので。 自分は泣きすぎないくらいがいいです。本当に涙流すか流さないくらいの、その堪えている感じが一番泣けるんじゃないですかね。“笑い”と“泣く”というのは両極ではありますが、芯は同じだと思います。こちら側が笑うとか泣くとか気にせずに真摯に役に向き合ってお芝居をしていれば、お客さんが自然と泣いたり、笑ったりしてくださる。それこそ、僕たちが究極に目指すところです。