AIエージェントが人間のバディーに--アクセンチュア、2024年の技術トレンドを解説
この空間コンピューティングが、3つ目のトレンド「私たちが必要とする空間:新たな現実の中で価値を創出する」につながる。ここでは、空間コンピューティングを仮想現実/拡張現実(VR/AR)を包含した、人間が作用することができる空間の拡張と定義している。 空間コンピューティングによって、あらゆる場所をパーソナルな作業環境のインターフェースとして活用できるようになった。米国では、10代の33%が「Apple Vision Pro」などのVR機器を所有し、そのうちの13%が週に1回以上利用しているという。 デジタル空間にサービスが解放される中、安全に楽しむためには空間の確保や事故・知覚、精神疲労を防ぐユーザー体験(UX)を考慮する必要がある。サービスプロバイダーは、没入と快適性を担保するべく、物理空間も合わせた統合的な体験設計にも注視するべきだとしている。 4つ目のトレンドは「デジタル化された私たちの身体:新しいヒューマン・インターフェース」。AIエージェントや空間コンピューティングといった新しいインターフェースの先には、脳神経による直接制御で考え方・感じ方・意識のさせ方をAIに組み込むことができるという。 人間の行動や表情、脳波、生理情報などの機微をテクノロジーが察することで、より人間の潜在的ニーズに沿った価値を提供できるようになる。これは、人間の情報を計測する技術の発展やデバイスの小型化によるもので、テクノロジーの常時装備が現実になった今、テクノロジーは人間の一部分として融合しつつあるのだという。 AIと人間の“共進化”によって、企業はAPIエコシステムから、各ユーザーがバディーとなるAIエージェントを持ち、バディー同士が相互交流する「双方向エージェントAIエコシステム」になるという。この環境下では、エージェントAIの育成がうまい人が活躍し、これが生成AIネイティブ世代の到来になると示唆する。 山根氏は、生成AIネイティブ世代がすなわち「BYOAI(Bring Your Own AI)世代」になるとし、AIエージェントをバディーとして共進化させ、業務だけでなく、プライベートにおいても常に自分のバディーとセットで行動するようになるという。 同氏は「企業は顧客との向き合い方や従業員の働き方を抜本的に見直す必要がある」と説く。例えば、AIエージェントを持つ顧客に営業をする場合、顧客が求めていることを理解しているバディーが企業のサービスや商品を購入するべきか助言したり、企業からのコミュニケーションの一次受けをバディーが担当したりする可能性もあるからだ。 また従業員に対しても、企業に入社する前から共進化したAIエージェントと共に入社し、スキルを獲得する。転職時にはバディーと共に退社し、次の職場で引き続き共進化するため、企業は情報セキュリティなどBYOAIルールの整備が必要になるという。 あらゆる人にAIエージェントがバディーとしている世界は、全ての意思決定がAIエージェントによって操作されるのではないかという懸念に対して、山根バディーは以下のように答えた。 「そうは思わない。AIエージェントを育て上げていくためには、自らもAIコーチから学ぶとともに、自らの考えや気付きを常にまとめてAIエージェントに問いかけるといった真に創造的なアクションが必要になるからだ。AIエージェントと共進化できる人をいかに増やすか、そのために何をしていくかが、これからの企業や学校における人材育成の大きなテーマになるだろう」