バイトダンス、広告事業の伸び鈍化で業績に打撃 米国でTikTok利用禁止の動きが影響か
TikTokを運営する中国テック大手のバイトダンス(字節跳動)が今、厳しい状況に置かれている。同社関係者によると、2024年1-9月期に売上高の伸びが大きく鈍化し、利益率も低下傾向に転じているという。 バイトダンスは今、収入の主力であった国内広告の失速、地政学的影響によるTikTokの収益の減少、大規模言語モデル(LLM)分野に対する巨額の先行投資、という3つの課題に直面している。 このうち国内の広告収入はバイトダンスの業績を支える主力事業だった。しかし中国のビジネスメディア晚点(LatePost)によると、2024年に入ってからバイトダンスの中国における四半期ごとの広告収入は、伸び率が前年同期比で約40%から17%以下にまで落ち込み、4-6月期、7-9月期とも目標に届かなかった。主な原因は、中国版TikTok「抖音(Douyin)」の電子商取引(EC)事業「抖音電商(Douyin EC)」の成長に明らかに陰りが見えてきたからだ。 世界市場では、TikTokを活用したビジネスの将来性が一貫してバイトダンスの評価額を引き上げる原動力だった。しかし2024年1-9月期にはTikTokの世界の売上高は予想に届かなかった。なかでも高い期待を寄せられていたEC事業、抖音電商の流通取引総額(GMV)は数カ月連続で予想を下回り、中国で大人気のライブコマースも欧米諸国では広まる気配がない。 このことはTikTokが直面する地政学的な問題と密接に関わっている。米バイデン大統領が2024年4月末に国家安全保障を理由にTikTokを禁止する法案に署名したため、TikTokは25年1月にも米国市場から締め出される恐れがある。これに対しTikTokは、合衆国憲法に違反するとして提訴したものの、法廷での弁論の状況から見て先行きは楽観視できない。まだ禁止されていないにもかかわらず、現在のように先が見通せない状況はTikTokと関係のある企業やクライアントの信頼を揺るがし、すでに業績に影響が表れている。 バイトダンスはこの3年間、事業再編の主な手段として人員整理を実施、VRヘッドセット「Pico」、ゲーム、ビジネスツール「飛書(Feishu)」などの事業を縮小する一方で、新事業のLLMに力を入れてきた。しかしLLMなどのAI事業に大量の資金を投入すれば、利益率は低くなる。世界のLLM分野ではいたるところで激しい競争が繰り広げられ、大量の資金がつぎ込まれている。海外メディアの報道によると、先頭を走る米OpenAIの今年の支出は総額で85億ドル(1兆3000億円)にのぼり、50億ドル(約7700億円)という巨額の赤字に陥るおそれがあるという。バイトダンスは独自のLLM「豆包(Doubao)」を開発しているが、大量の資金投入は当然ながら利益率の脚を引っ張るだろう。 豆包は今年5月、ユーザーを囲い込むため中国でLLMの価格競争に打って出た。さらにスマートデバイス分野にも参入し、10月にAI搭載イヤホン「Ola Friend」を発売した。しかし広告収入が減少し、TikTokが米国で存亡の危機に瀕しているという状況では、バイトダンスの利益率はしばらく押し下げられると予想される。 *1ドル=約153円で計算しています。 (翻訳・36Kr Japan編集部)