社説:臨時国会閉会 開かれた熟議まだ足りない
強引さが目に余った「自民1強」時代と比べれば、耳を傾ける姿勢も見られたが、短い日程の中で駆け引きが目立った。伯仲国会に託された国民の期待に十分応えたとは言い難い。 臨時国会がきのう閉会した。 衆院選で少数与党に転落した石破茂政権は、綱渡りの国会運営を強いられた。本年度補正予算は28年ぶりの修正を余儀なくされ、使途を明らかにせず支出できる「政策活動費」の廃止では野党案を丸のみした。 石破氏は閉会後の記者会見で「熟議の国会にふさわしいものになった」と述べた。野党第1党の立憲民主党の野田佳彦代表も「画期的な予算審議だった」と手応えを語った。 一定の成果は認めるが、水面下の協議や数合わせの妥協も相変わらず見られた。 補正予算審議は、与党が立民の主張を一部受け入れ、能登半島地震の復興費を拡充して修正可決する異例の展開となった。立民は予算案には反対したが採決には応じ、国民民主党と日本維新の会が賛成に回った。 だが、「規模ありき」で14兆円近くに肥大化した総額自体には切り込めなかった。立民は、基金の積み増しなど緊急性の低い支出が含まれると減額を求めたが、自民が拒否し、中身の精査は不十分に終わった。 「政治とカネ」の問題では、政策活動費の全廃を含む政治改革関連3法が成立した。 自民は当初、支出先を非公開にできる制度の導入を目指したが、野党7党が全廃で足並みをそろえ、断念に追い込まれた。 国会議員に月額100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開と残金の国庫返納も決まった。選挙での大敗で、自民が重い腰を上げた格好だ。早期に支出範囲や公開方法などを詰め、実効ある制度設計を求めたい。 一方、焦点の企業・団体献金は、自民が固守する姿勢を崩さず、年明けの通常国会に持ち越された。後を絶たない金権汚職の温床との批判が強まっているが、自民は「禁止より公開、透明化が重要だ」と譲らない。 30年前から積み残した改革の本丸で、政党交付金との「二重取り」への不信は根深い。石破氏は指導力を発揮すべきだ。 派閥裏金事件の実態解明も道半ばだ。衆参約20人が政治倫理審査会に出席したが、またぞろ裏金作りの経緯に関して「知らぬ存ぜぬ」を繰り返した。通り一遍の答弁で、幕引きを図るのは許されない。 旧安倍派幹部の萩生田光一元政調会長は派閥事務局から指示があったと発言した。誰が、いつ、何の目的で裏金化を始めたのか。同派事務局長の参考人招致や、派閥幹部の証人喚問で問いただすべきだ。 通常国会では、国民に見える形で論点を深めて合意を形成する真の熟議を求めたい。