「こんなあっさり勝っちゃうのか…」男子バレー関田誠大は“運命の第3セット”で何を考えていたのか「東京五輪よりは絶対、上にいけると思っていた」
石川祐希の劇的なカムバック
第2戦以降はエース石川祐希(ペルージャ)のスパイク決定率が上がらない中、アルゼンチン戦は小野寺太志(サントリーサンバーズ大阪)、山内晶大(大阪ブルテオン)のクイックを多用して勝利につなげた。アメリカ戦は途中出場の大塚達宣(ミラノ)を活かし、準々決勝進出の条件だった1セットを奪い、なんとか乗り切った。 チームの軸である関田と石川はイタリア戦に臨む前、2人で話をした。そこで互いの意識を確認し合い、練習ではコンビも再確認した。 そうして臨んだイタリア戦で、石川は爆発した。第1セットの7-7から石川が強力なサーブで崩し、関田のトスから石川が立て続けにパイプ攻撃を決め連続ブレイクで9-7とすると、関田は跳びはねながら笑顔で駆け寄り、石川とガッチリ抱き合った。 この試合ではコート内で関田と石川が互いに目を見て話すシーンが多く見られた。会心のスパイクを決めた後、石川が指でOKサインを作りながら満面の笑みを関田に向けた場面も。 イタリアの攻撃に対して守備が機能し、そこから生み出したチャンスを、石川を中心に得点につなげていく。準々決勝にきて初めて、日本らしい戦いができた。 エースの劇的なカムバックに映ったが、司令塔はクールに振り返る。 「いつも通りですよね。上げて決まれば上げるし。決まらなかったら別のとこに上げるし。決まってたんで、どんどん乗せていこうとは思って、彼に託した場面は多かったと思います」 この試合、石川は実に61本ものスパイクを打った。チーム2番目の西田有志(大阪ブルテオン)が34本だったことからも、いかに託していたかがわかる。 日本は持ち味の守備が機能し、決めるべき人が決め、第1、第2セットを奪った。 「『あ、こんなあっさり勝っちゃうのか』って……。でもそんなわけないだろうなとは、3セット目をやりながら思っていた。それでも接戦の中、僕たちはいい流れでラリーを取ったり、ディフェンスしたり、いいプレーが出ていたので、『これはいけるぞー』とは、心の中で思っていました」 日本は第3セットで24-21とマッチポイントを握った。だがやはり、あっさり終わることはなかった。ここからの展開を司令塔はどのように見ていたのか、聞いてみたのだが――。 〈後編に続く〉
(「バレーボールPRESS」米虫紀子 = 文)
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