どうなる?有原と安楽。スカウトの腕が試される2014年ドラフト
「今年のドラフトはスカウトの腕が試されると思う」 10月23日のプロ野球ドラフト会議を前に、そう語るのは、ヤクルトで30年以上にわたってスカウトをしてきて古田敦也や宮本慎也らを発掘した片岡宏雄氏(78)だ。 「今回は、誰が見ても『こいつだ!』という即戦力の投手も野手もいない。そうなると、自分のチームカラーに合った選手をどう選ぶか。この程度の即戦力ならばと、1位で将来性のある高校生を選ぶチームもあるだろう。しかも、注目のピッチャーに不調や故障の不安がある。でもね。おそらく自信のあるスカウトは喜んでいるんじゃないか」 片岡氏が言う。 「リストアップ作業は、ほとんど終わっている。ピッチャーのいい時を見ているスカウトは、そこで決断しているので、直前で調子が落ちて評価が下がる場合、逆に競争相手が減って喜ぶんだ。ただし、肘や肩の深刻な故障の場合は話は別で、そこはしっかりと調査をしておかねばならないが、私の持論としては、疲れや不調などが原因なら問題はないと見ていい」 1999年に片岡氏が早大から逆指名の2位で獲得した藤井秀悟がそうだったという。 「彼は故障が多くて4年のときは活躍ができずドラフト直前には多くの球団が手を引いていた。ある意味、賭けだが、プロでコンディショニングをちゃんとすれば、大丈夫だと思っていた。いいときを見ていたから、あれが出せるなら通用すると考えていた。故障が深刻なら回避すべきで、高校生はいいときを見ても難しいが、大学では、いいときで判断するもの。ドラフトなんて絶対に活躍できるなんて保証はないから。賭けだから。スカウトの目なんて、そういう意味で節穴なんだよ」 その藤井は2年目に14勝利して片岡氏の賭けに応えた。 高校生で判断の難しいのが、済美の安楽智大だ。最速157キロを投げた本格右腕だが、故障を経験した肘への不安が大きい。1年は治療に時間が必要だという説もあって、それだけの余裕がない球団は撤退を決めている。また、すでに広島が早々と1位指名を公表、競合が予想される早大の有原航平についてもスカウトの評価は分かれる。右肘を痛め、ここまで先発登板ができなかったが、18日の立教大戦でようやく先発復帰。だが、2回にホームランを浴びるなど、6回を7安打4失点で敗戦投手となった。最速156キロのストレートは、まだ平均して140キロ中盤。片岡氏は、有原について2010年に6球団が競合した末に西武へ入団したものの、泣かず飛ばずの同じく早大OBの大石達也の二の舞になる危険性も指摘した。