路線バスの赤字問題、もう「批判」だけじゃ解決しない? 事業者の「96%」が赤字現実、必要なのは利用者の当事者意識か
新しいモビリティ社会のビジョン
地域の関係者全体が公共交通について考える際、鉄道・路線バス・タクシーといった乗り物の 「標準的な区分」 をなくす姿勢も大切だ。バスはダイヤ方式に制約があり、ニーズに応じた相乗り型のAIオンデマンドワゴンの普及も進んでいる。また、バス型の車両だけでなく、タクシー型の車両もあり、さまざまな形態が融合している。 筆者も三鷹市の地域公共交通活性化協議会の会長としてAIオンデマンドワゴンの運行に関わっているが、 「ニーズに応じた柔軟な乗り物」 は非常に評判がよいことがわかっている。このような新しい乗り物の導入も、地域公共交通活性化協議会での議論が基になっている。自治体、事業者、市民の三位一体の議論が新しい地域交通手段を成功に導いており、この協力体制が各地で求められている。
「やれ!」では響かない時代の到来
本稿で見てきたように、路線バスやそれに関連する乗り合い移動手段について、地方自治体、交通事業者、市民が協力して考える場は確実に増えている。市民が意見を出しやすい環境も整いつつある。 必要なのは、議員や行政職員がさらに利用促進を進め、考える場への参加を呼びかけることだ。そして、 「利用者としての責任と役割」 を再認識する時期にも来ている。未来のバス社会を創るためには、私たち市民が具体的な一歩を踏み出すことが重要だ。「やれ!やれ!」と声高に叫ぶだけでは何も響かないし、バス事業者もそれでは動かない。 「どうすれば実現できるのか」 「なぜこれまで実現できなかったのか」 を考えるときである。自治体、事業者、市民が協力し、ともに創る仕組みをさらに考えていくべきだ。
西山敏樹(都市工学者)