路線バスの赤字問題、もう「批判」だけじゃ解決しない? 事業者の「96%」が赤字現実、必要なのは利用者の当事者意識か
利用者の意識の変化が必要
私たち生活者に求められるのは、バス事業者や行政に対して「やれ!やれ!」と叫ぶことではない。苦しい状況にあるバス事業者に ・寄り添い ・一緒に考えながら バスを維持できる環境を創ることが必要だ。現在のようにバス事業者任せでは、彼らも何もできず、利用者の共感を得ることも難しい。 筆者は地方自治体の地域公共交通活性化協議会の会長を務めている。この協議会は各自治体に設置され、学識経験者や行政、公共交通事業者(鉄道・バス・タクシーなど)、市民代表、福祉団体などが集まり、地域公共交通の方向性やバスのダイヤについて議論している。地域で公共交通のあり方を話し合う風潮は、公共交通にとって非常に重要な後押しとなる。政策的に公共交通を支えることは、その維持や発展につながり、大切な役割を果たしている。 例えば、静岡県御殿場市では未来プロジェクト課が 「路線バスを育てよう」 という合言葉のもと、公共交通利用促進運動を展開している。御殿場市は 「路線バスを1年に3回は利用しよう」 と呼びかけた結果、2019年度には前年度比7万人増の85万人が利用することとなった。地域政策を創るには、議会や議員、自治体職員の役割が非常に重要であり、特に首長や議員が公共交通活性化をマニフェストに盛り込むことは非常に少ない。こうしたなかで路線バスを育てる政策は、参考になる優れた例だ。 さらに、毎年9月20日の「バスの日」には、バスの無料利用日を設けたり、親子を対象にしたバス営業所の開放イベントを行ったりするなど、路線バスの魅力を知ってもらう取り組みが増えている。
自分たちで考えて行動する社会へ
こうして、路線バスの厳しい状況を生活者や地域にインプットする機会が増えている。問題は、 「その情報をどう活用するか」 というアウトプットの部分だ。インプットを得て地域の移動手段を考え、実際にバスを利用することが、バスの維持と発展につながる重要なサイクルを地域で作り出すことが必要だ。御殿場市のような呼びかけは、 「本当に、路線バスをみんなで使わないと大変なことになる」 という危機感を共有し、生活者の行動変容につながる。ほかにも、滋賀県を中心に交通税について議論したり、全国的なバリアフリー運賃など特定施策運賃の議論を喚起したりすることも重要で、これが市民の行動変容に結びつく。 筆者は、地域交通の維持を真剣に考えるなら、運賃や税金について ・行政 ・事業者 ・市民 の三者がともに考える流れが必要だと考えている。今こそ、地域交通の共創を行うべき時期だ。 そのために、 「利用者が積極的に意見を表明できる場」 を自治体とバス事業者が作ることから始める必要がある。この点で、地域公共交通活性化協議会の有効化が重要だ。その協議会を起点に、バス事業者と市民が協力し、限られたバスの資源の配分やダイヤを共創していく。そして御殿場市のように自治体自ら行動変容を促す流れが全国的に必要だ。もはや、待ったなしの状況に来ているのだ。