「谷中」が外国人の新たな観光地に 見直される下町の価値
全国から集まった谷中の街歩きイベントの参加者(中野宏一撮影)
東京都台東区の谷中に、外国人観光客の姿が増えつつある。東京スカイツリーや浅草寺、渋谷などの定番観光地と並び、近年「谷中」を歩くことが、外国人に人気を集めているのだという。他の観光地と比べて派手さのない谷中だが、国内外の観光客の心をとらえるその魅力は何なのか。4月の週末、記者が谷中の「街歩きイベント」に参加し、その奥深い魅力を探った。
外国人観光客でごった返す「昭和の商店街」
4月16日午前10時、東京・日暮里駅からほど近く、谷中銀座を見下ろす「夕焼けだんだん」の上に約40人の男女が集合した。街歩きイベントのために集まった一行は4組に分かれ、「谷根千(やねせん)」と呼ばれる東京の下町、谷中・根津・千駄木を歩く。 「谷中銀座」と呼ばれる谷中の商店街は、昔ながらの商店街の雰囲気をよく残し、行き交う人の肩が触れ合うほど、ごった返していた。切り絵を売ったりお惣菜を売ったりと、活気ある呼び込みが響く。驚いたのは、外国人観光客の多さだ。10メートルに1組は、外国人の観光客がいる。この「昭和の商店街」に、なぜこんなに外国人観光客がいるのか。 「外国人の観光客は、ここ2,3年に急に増えました」と、案内人を務めるNPO「たいとう歴史都市研究会」の椎原晶子副理事長は説明する。「海外の大手観光口コミサイト『トリップアドバイザー』で『谷中』が『日本の伝統的な街並みを残す場所』として紹介されたこともきっかけのひとつです」
「本物の暮らしが息づく場所」として注目集まる
谷中・根津・千駄木は、大半が第2次世界大戦の空襲を免れ、戦前からの木造住宅や路地が多く残る。椎原さんは東京芸術大学の学生だった30年前から、東京の下町に惹かれ、街並みや古い家屋を残す活動をしている。 「30年前は、バブル絶頂期で谷中は、”開発の遅れた場所”として知られていました。防災の観点から、細い路地や木造住宅は危険だと、行政からは思われていました。」その谷中が今、「本物の暮らしが息づく場所」として見直され、世界中から注目を浴びているのだ。