沖縄県議選で玉城デニー知事の与党が敗北、辺野古そして経済問題の行方は?
経済問題への強い思い
もうひとつは、沖縄県の抱える経済問題がある。新型コロナウイルス感染拡大の影響による観光業の大きな打撃、さらにそれに続く物価高などが沖縄の経済を直撃した。那覇市の中心にある国際通りでも、長年営んできた店を閉める人の姿も多く見られた。政府からの沖縄振興予算も減らされるなど、県民の間では「経済こそ大切。辺野古だけが問題ではない」と不満の声も出ていた。有権者の中には、若い世代を中心に「基地問題より暮らし」という考えも増えている。今回の選挙戦、自民党の候補たちが訴えたのは「地域振興」だったそうだ。
知事の支持母体も揺らぐ
辺野古問題と経済問題に加えて、翁長前知事、そして玉城デニー知事を支える「オール沖縄」という勢力にも変化があった。当初は沖縄経済界のトップらが、保守も革新も関係なく、その名の通り"すべて1つの沖縄"としてまとまっていたが、辺野古問題が動かず、経済が衰退する中で、次第に離脱する人が増え始めた。そのため「オール沖縄」の勢いにも翳りが見られるようになった。それも今回の敗北の一因であろう。
沖縄を取り巻く動きが加速?
少数与党となった玉城デニー県政、今後の行方は厳しくなりそうだ。「求心力が落ちる」というより、まず目の前のハードルは「議会との向き合い」である。予算をはじめ、様々な政策が認められない可能性があり、玉城知事にとって、自分がやりたい政策にも、手かせ足かせが加わる。辺野古問題だけではなく、今、沖縄県は、台湾で有事があった時に備える自衛隊の配備問題も抱えている。与那国島から始まり、石垣島など南西諸島への自衛隊の配備は、着々と進められているが、今回の選挙結果を受けて、政府にとってはこうした計画も進めやすくなると見られる。
忘れてはならないこと
今後の焦点は、2年後の2026年にある沖縄知事選。それに向けて、玉城知事はどう県政をリードしていくのか。これからの2年間も、辺野古の埋め立て工事は進められるし、自衛隊の配備も進んでいく。先日も政府は、台湾有事などの際の住民たちの避難先を明らかにした。沖縄県政が落ち着かない状態が続く中、沖縄を取り巻く環境は大きく変わっていこうとしている。しかし、これらは沖縄県民だけの問題ではなく、国民全体が見つめ、考え続けなければならない重要な課題であることに変わりはない。 【東西南北論説風(501) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
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