霊はいつもあなたを監視している?映画『新・三茶のポルターガイスト』豊島圭介監督と角由紀子に聞く
馬鹿にされがちなホラー映画に無限のポテンシャルを感じて
ー現場に入るときや撮影中に気を付けていることはありますか? 豊島:基本的にはありませんね。何も撮れないと困りますので(笑)。 角:気を付けていることは、茶化さない、無礼な態度を取らないという点です。霊たちも協力して映画をつくってくれていると思っています。 ーヨコザワ・プロダクションで霊現象が起きる一番の原因は何だと思いますか? 角:ヨコザワ・プロダクションに関しては、場所が原因だと思います。建物の下に井戸が埋まっているそうで、それが原因で前作にもあったような水漏れが起きているんじゃないかと。それと、個人的には横澤さんがキーパーソンになっていると思います。 ーどうしてそう思われますか? 角:横澤さんはとても霊感が強い人なんです。だからヨコザワ・プロダクションでも横澤さんが媒介となって、現象が起きているんじゃないかなと思います。 たとえば、横澤さんとコックリさんをしたらスイスイとコインが動くんです。前作でも「わかばやし」という具体的な地名を引き出すことができました。また、私たちにどうしてほしいかなど、具体的なメッセージや受け答えができるんです。そんなふうに会話ができること自体とても希な出来事なんです。 豊島:たしかにそう考えると辻褄が合いますね。先ほどの横澤さんの怪しい発言というのも、彼自身が霊の気持ちを代弁したり思いを反映する、媒介としての役割を持っているから生まれる発言なのかもしれません。 ー今回の制作を通して霊といわれる存在から強いメッセージを受けた感覚はありますか? 豊島:霊というよりは、何か別の存在のような感覚を受けましたね。ショーのようなものを見せられている印象です。まるで「何か」が人間の真似をしているようか感覚。僕は、あの現場にいる物が霊だとは思えないんです。「人間の真似をしている何か」である気がします。 人間の真似ができたことを「見て」と言わんばかりに出てくる。そんな、子どものような存在です。でも、だからこそ怖いんですよ。子どもって残酷なことも平気でするじゃないですか? いつか自分も平気で何か危険なことをされるんじゃないかな? と感じることも多々ありました。 角:私はオカルトの研究もしているので、その観点から考えると何か大きな現象には、理由や背景があるんじゃないかと思っているんです。バチカンがエクソシズムのガイドラインを変えたり、昨今では未確認飛行物体などの話題も多く取り上げられています。ヨコザワ・プロダクションでの現象も、この一連の流れのなかで、出るべくして出てきたと感じます。 ー豊島監督におうかがいします。数々のホラー映画を撮られていますが、このようなホラー映画を世に送り出すことについてどう思われますか? 豊島:ホラー映画は、観る側のチャイルディッシュな欲望に応えられると思うんです。お客さんの「怖がりたい」という欲望に、純粋に応えることができる。だからこそ、リテラシーの高い方からしたらホラー映画は馬鹿にされるジャンルでもあるんですよ。 しかし、我々は怖いだけではなく、社会性のある部分やウィットに富んだ映画をつくろうとしているんです。海外だとA24ホラー的な映画ですね。でも、キャスティングをしている段階でも、俳優側から「ホラーですよね?」なんて軽々しく扱われてしまうことも多々あります。 ホラー映画って凄くポテンシャルを秘めていると思うんですけどね。僕はそんなホラー映画を見直してほしいと感じています。 ーそれでもホラー映画を続けるのはなぜでしょうか? 豊島:もともと怖いものが得意ではなかったので、子供の頃はほとんど見たことがありませんでした。見始めた年代は遅くて、30代の頃に呪怨の監督でもある清水崇監督から師事を受けてからなんです。ホラー映画って映画づくりのすべてが詰まっているんですよね。どの順番でどの情報を見せるかという、映画文法の基本的なところが詰まっています。 たとえば、どのタイミングで霊を出すか? その順番は? そんな見せ方一つで、物語自体は変わらないのに印象が変わってくる。それを知ったときに、ホラー映画づくりがやめられなくなりました。 ー角さんがオカルトやホラーに魅せられたキッカケや時期はいつ頃ですか? 角:高校受験の受験日に、友達と『リング』を映画館まで見にいったんですよ。そこで貞子が出てくるシーンを見て、ものすごく怖いと感じたんです。でもそれ以上に、その貞子のシーンが怖すぎて腰を抜かした人が、映画館を四つん這いで出ていったのを見たんです(笑)。そのときに、ホラー映画ってすごいなーっと感じたのを覚えてますね。オカルトに関しては、父が霊感のある人だったので、そこから影響を受けているのもあると思います。 ー少し話を戻しますが、先ほど「何かされるかもしれない」という恐怖と隣合わせだったという話がでましたね。お二人なりの霊現象に対する対処法などはありますか? 豊島:対処法は、基本的には「喜ぶ」ですかね(笑)。僕はいわゆる呪いと言われるような酷い目に遭ったことがないんですよ。角さんはどうですか? 角:無礼はしないということが一番大切です。無礼なことをすると、呪われたりしてしまう危険性があると思います。霊に対してはいつも「ありがとうございました」とお礼の言葉を言うようにしています。敵意がないことを、しっかり伝えたほうが良いですね。