伊東勤氏&槙原寛己氏 不振で2軍落ちの巨人・大城卓はV奪回へ欠かせない戦力、復活期待
阿部慎之助新監督(45)が率いる巨人は、開幕から38試合を終え貯金3の2位と好発進した。数少ない懸案は昨年の正捕手、大城卓三捕手(31)。打撃不振もあり、8日に出場選手登録を抹消された。旬の話題に鋭く斬り込む企画「マイ・オピニオン」では、スポニチ本紙評論家の伊東勤氏(61)、槙原寛己氏(60)が巨人の捕手事情を分析。両氏はそろって、大城卓をV奪回へ欠かせない戦力と位置づけた。 【伊東勤氏 自分の良さ伝える“表現力”磨け】2月のキャンプ取材で捕手起用の話を聞いた時、阿部監督は「大城(卓)でいく」と語っていた。開幕してみたら出番が減って小林、岸田との併用になっていた。私も同じだが自分が捕手だったのでどうしても高いものを求めてしまう。「大城だったらもっとできるはず」という思い。大城卓の性格はおおらかでおっとりしている印象がある。捕手は繊細さが必要だし、経験の浅い投手を引っ張るリーダーシップも求められる。阿部監督は“正捕手”を任せるには物足りなさを感じているのだろう。他の選手を使うことによって大城卓が刺激され、一皮むけてくれることを期待していると思う。 中日のヘッドコーチ時代、リードの粘っこさや、「こいつが出てきたら嫌だなあ」と感じたことはほとんどなかった。打席の時には意外性もある怖いバッターだったが、守りの時には意外性は全くない。オーソドックスというより打者が嫌がるサインを出す捕手ではなかった。対照的に小林、岸田はねちっこいリードをする。阿部監督はどんなサインでどんな結果になったのか全て分かっているから、大城卓を見る目が厳しくなる。 ただ1年間、小林、岸田との併用で賄えるかといったら疑問符が付く。今年のプロ野球は投高打低。大城卓が6番以降で打撃力を発揮すれば、他球団には脅威になる。今の大城卓に求めたいのは“間違ってもいいから、もっと自分を出してほしい”ということだ。 8年か9年前だったか正捕手をつかみきれない頃の広島・会沢に「どうしたらいいですかね」と相談されたことがある。その時に私は「自分の良さを伝える表現力が足りないんじゃないの」とアドバイスした。大城卓にも同じことを伝えたい。リードする投手にもベンチにも、相手打者にも大城卓の強み、個性をアピールしていけば印象はガラリと変わる。阿部監督とはコーチと選手として一緒にやってきた仲だ。出場選手登録を抹消されている今は難しいが、1軍に再昇格したら遠慮せずにバッテリーコーチではなく直接、阿部監督にアドバイスを求めにいけばいいと思う。 【槙原寛己氏 もっとガツガツした姿勢見せて】球団史上初の捕手出身の指揮官。それも阿部監督は希少な「打てる捕手」だった。自分のプレースタイルと重なる選手を求めるのも当然だろう。一方で、チームを率いるからには犠打や走塁なども駆使した「勝つ野球」を展開しなければならない。この「穴」に大城卓ははまってしまったように見える。 最大の持ち味であり、期待される打撃の不振が目立って2軍降格となった大城卓だが、大事な場面でのバント失敗なども響いた。特に今季のプロ野球は投高打低。派手な野球のイメージがある指揮官だが、目指すのは1点を守って勝ちきる野球だ。大城卓はその野球に対応できず、そこからリード面や打撃の不振など全て悪循環に陥った印象だ。リードも、投手目線で見て特に「これはおかしい」という配球はない。それでも小林らと比べると大味な試合になるイメージがある。これも現状では阿部監督の目指す細かい野球と相いれなかったのではないか。 2軍降格。大城卓にとっては生まれ変わるチャンスだと思う。おとなしいイメージで、オーバーアクションで投手を鼓舞するような捕手ではないが、2軍では泥にまみれてガツガツとプレーする姿勢を取り戻してほしい。私の現役時代、正捕手は同学年のチュウ(村田真一)だった。相手が年上だろうと「何やっとんねん」と言いにくいことも平気で言う。プレーと言動でナインを鼓舞し、チーム内の信頼が厚かった。 阿部監督も現役時代、沢村(現ロッテ)への「ポカリ事件」など闘志を外に出す捕手だった。性格なので難しい点もあるだろうし、大城卓にまねをしろとは言わない。ただ、今回の2軍落ちでは野球への向き合い方を考え直せると思う。勝利、結果への執着心、必死さ…。阿部監督はそんな大城卓の「変身」を待っている。だから、この時間は決してネガティブなものではない。 まだ5月だからこその、あえての荒療治。この期間は岸田、山瀬ら若手の成長を促すこともできる。ただ、今季のリーグ優勝のためには大城卓が「正捕手」として復帰するのが必要不可欠。阿部監督の下で捕手としてプレーするのは大きなプレッシャーがあるだろう。それをはねのける闘志を見せてほしい。 ≪阿部監督 抹消理由「一番は気分転換」能力の高さは熟知≫巨人の阿部監督は、開幕から大城卓を先発で起用していたが、投手によっては小林、岸田に先発マスクを任せてきた。「岸田とか小林のキャッチャーとしての振る舞いだったりを勉強してほしい。そういうのを見てどう感じて本人がやるかだけだと思う」と説明していた。その後も打撃の調子が上がらなかった大城卓は8日に出場選手登録を抹消された。指揮官は言う。「一番は気分転換。持っているものは素晴らしいものを持ってるんだから、野球が楽しいとか、もう一回そういった原点に戻ってきてくれと」。必要な戦力だからこそ、早めにリフレッシュさせ、はい上がることを望んでいる。