元保険営業マンの反省 なぜ「高すぎる保険料」に疑問を抱かなかったのか
保険料に上乗せされた「経費」は、積み立てには回らない
人件費以外の「経費」にも疑問があります。日本では首都圏の一等地(たとえば皇居近く)に事務部門が入るオフィスを構えている会社があります。大手生保のアメリカ支社で副支社長をなさっていた橋爪健人さんの著書『日本人が保険で大損する仕組み』(日本経済新聞出版社)によると、米国の保険会社では、収益を生まない事務部門は、経費削減のため、地方に置くことが当たり前だそうです。 言うまでもなく、保険会社の運営費として費消される保険料は、お客様の死亡時や入院時に支払われるお金にはなりません。 貯蓄商品の保険料のうち、代理店に支払われた手数料などが、積み立てに回らないことを想像するとわかりやすいでしょう。経費が高いほど、保険商品の品質は確実に下がるのです。保険料に見込みで含まれている経費の割合について、商品別に具体的な数字を出しているのは、私が知る限りライフネット生命くらいです。他社が情報開示していないのは、公にしたくない水準だからでしょう。 複数の保険数理の専門家によると、売れ筋の『医療保険』で保険料の約30%が手数料で、保険会社の運営費に回る設計になっているそうです。「1万円入金すると3000円の手数料がかかるATM」のようなものなのです。 私がこうした問題について考えるようになったのは、最初の自著を書いた10年くらい前からです。保険会社の収益構造を学んだ時点で、その源泉である保険料の「透明性(経費率などが情報開示されているかどうか)」「妥当性(加入者への負担を堂々と求められる水準なのか)」について考えなかったことを反省しています。営業マン時代は、自分がやっていることを正当化したい願望もあり、突き詰めて考えることから逃げていたと思うのです。 見方を変えれば、保障関連の商品における保険料は、数十パーセント下がる余地があるわけです。「加入者が負担するコストを明らかにしてほしい」などと声を上げる消費者が増えることを望みます。 (オフィス・バトン「保険相談室」 代表 後田亨)【連載】元保険営業マンが今だから話せる「保険の真実」