元保険営業マンの反省 なぜ「高すぎる保険料」に疑問を抱かなかったのか
ときには支払った掛け金以上のお金を受け取れる保険。そんな一見、入っているとおトクで安心に見える商品を次々と企画し販売する保険会社は、いったいどのようにして利益を出しているのでしょうか? 今回は気になる保険会社の「儲けの構造」について考えてみたいと思います。(解説:オフィス・バトン「保険相談室」 後田亨) 【連載】元保険営業マンが今だから話せる「保険の真実」
保険会社の営業部員がまず教わる「保険会社の3つの基本的な収益源」
一般に、保険会社の基本的な収益源は主に 1 保険金支払いに関する差益 2 保険料の運用で得られる収益 3 経費の多寡により生じる差益 の3つであると説明されます。 まず、保険会社が加入者の死亡時や入院時などに支払うお金の額は、人が死亡する確率や入院する確率から「見込み」で保険料に反映されています。保険会社の健全な運営のために、若干でも高めに確率を見ておくと、実際の支払額が見込みより少なくなり、差益が出やすくなるわけです。 また、お客様が支払う保険料を運用して収益を得ることもできます。保険料の徴収から、死亡保険金や入院給付金の支払いまでには相応の時間があることが多いからです。ただし、市場の金利や株価が低迷し続けるような環境では、お客様に約束している利率を実現するために、保険会社負担になることもあります。 それから、保険料には保険会社の運営に要する経費が、やはり「見込み」で含まれています。したがって、見込みより経費が抑えられた場合、差益が発生します。 3つの収益源の中で最も大きいのは、「保険金支払い見込みと実績の差」によって生じるもので、運用が難しい時代にあって、保険会社の経営を支えています。 以上の説明は、私が保険会社の営業部門で教わったことです。大学教授などによる保険の本を読んでも、ほぼ同じことが書かれているので、長いあいだ「なるほどそういうことか」と納得していた次第です。
保険料はなぜだか高い その理由を考えてみると……
ただ、後年「この説明で納得してはいけない」と感じるようになりました。たとえば、多額の経費を見込んだ保険料にしておき、さんざん経費を使うと差益は出なくなります。仮に「無駄」や「贅沢」があっても、暴利が疑われにくいのです。したがって、差益が出る構造を理解するより、保険料の設定を問題視するほうが大切だと思うようになったのです。 私が保険営業の仕事を始めて、最も驚いたのは、歩合制の報酬体系のせいか、離職する人が多いことでした。大手生保の一支社で同じ月に採用された同期は40名弱。3年後に残っていたのはたったの2名でした。近年も状況は大きく変わっていないと思います。各社の営業職の採用数と在籍者数の増減を見るとわかります。 ある大手生保では2014年と2015年度で1万7000人超を採用していますが、在籍者数は700名強しか増えていません。男性中心の営業部隊を抱える会社でも過去2年間に1000名超を採用していながら、在籍者は255名しか増えていません。平均勤続年数も約9年です。 読者の皆さまは、「採用された新人の大半が数年以内に退社する」ことをふまえ、保険会社の運営に必要な経費が見込まれ、保険料に反映されているとしたら、容認できるでしょうか。 人材の採用や育成が下手な会社は、管理職の減給などを進めるべきであって、長年、改善されない運営のツケをお客様に負担させる仕組みは迷惑だ、と感じないでしょうか。