衆院選挙の行方と金融市場・金融政策:日銀は日米の選挙結果と為替に翻弄される
自民党下野で円高・株安リスクは大幅に高まる
そして、政治の混乱が最も強まるのは、自公が失う議席がかなりの多数に達し、その結果、政権を担うことが難しくなるケースだろう。その場合、自公は下野し、現在の野党が連立政権を模索することになる。しかし、連立交渉は困難を極め、政治の混迷は極まるだろう。 さらにそうした連立政権では、立憲民主党が中核になるだろうが、立憲民主党は日本銀行の金融政策正常化を支持している。そのため、利上げが進むとの観測から円高が進みやすくなる。その場合、政治不安を映したリスクオフ傾向と日本銀行の利上げ観測が重なることで円高が大きく進み、それが政治不安を映した株安傾向を増幅し、円高株安傾向が強まることが予想される。 その際には、選挙後1~2週間程度で、ドル円レートは1ドル145円程度まで円高が進み、日経平均株価は3万5千円程度まで下落する可能性を見ておきたい。
政治混乱と円高・株安は日本銀行の追加利上げの妨げに
自公が大幅に議席を落とし、円高株安が進む場合には、金融市場の安定に配慮して、日本銀行が追加利上げを見送り、様子見姿勢を強めることになるだろう。その場合、年内の追加利上げはより難しくなるだろう。 他方、与党が過半数の議席を維持して政治不安が緩和される場合、そしてこれに米国経済の堅調や米国の利下げペースの鈍化などの観測から1ドル155~160円のレンジまで円安が進む場合には、日本銀行の利上げは後押しされる。1ドル155を超えて円安が進む場合には、政府の為替介入の可能性が高まるだろう。政府が為替介入で円安阻止に動く場合には、追加利上げに慎重だった石破政権は、一転して日本銀行にも円安阻止で政府との協調を求め、利上げを望むだろう。その結果、今年12月の利上げの可能性が高まる。 このように、当面の日本銀行の金融政策は、衆院選挙結果と為替動向に左右されるだろう。さらに、その後に控える11月5日の米大統領選挙も、米国経済の見通しと為替市場に大きな影響を与えることから、それらを通じて日本銀行の金融政策決定にも大きく影響するはずだ。日本銀行は、日米の政治イベントに翻弄されることになる。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英