ドイツで「シェルター計画」と「新たな兵役モデル」 「2年連続マイナス成長」深刻な不景気への特効薬は軍拡なのか
車突入事件の直後から移民・難民排斥デモ
2015~16年にやってきたシリア難民は100万人を超え、現在も大部分がドイツにとどまっている。10年前は「シリア難民は人手不足に悩むドイツ経済の救世主となる」との期待があったが、肩すかしに終わってしまった。それどころか、「彼らのせいで国内の治安が悪化している」との非難が噴出している。 生活が厳しくなったドイツ人が最も怒っているのは、移民がドイツの社会福祉制度に依存していることだろう。独連邦雇用庁が昨年9月に発表したデータによれば、「市民金(生活保護と失業手当をひとまとめにしたもの)」の受給者の3分の2が移民の背景がある人たちだ。シリア難民の受給者は約50万人に上っている。 移民への風当たりが強まっている矢先に恐れていた事件が起きた。 ドイツ東部マグデブルクで20日、クリスマスマーケットに車が突入し、子供を含む5人が死亡、200人以上が負傷した。無差別攻撃の犯人はサウジアラビア出身の50代の医師だ。詳しい動機は明らかになっていないが、犯行直後からドイツ各地で「移民・難民の国外追放」を訴えるデモが相次いでいる。 CDU/CSUはAfDとの連立を拒否しており、次期政権はSPDとの大連立となる可能性が高いが、SPDは移民の国外追放に消極的だ。このため、総選挙後も移民問題に対する国民の不満が解消されることはなく、ドイツ政治を揺るがす火種としてくずぶり続けることになるだろう。
新たな地下壕計画、兵役モデルの施行
移民問題に加え、「有事への備え」もドイツ政治の中心テーマとなった感がある。 ドイツ政府は11月下旬、ロシアからの核攻撃に対処するため、避難シェルター(バンカー)のリスト化や設置の奨励などを含む新たなバンカー計画に取り組んでいる。ドイツにはかつて約2000カ所のシェルターがあったが、現在使えるのは579カ所のみ。約8400万人の人口に対し、48万人分に過ぎない。 ドイツ政府は軍の規模拡大に踏み切る構えもみせている。ピストリウス国防相は18日、兵士を現在の約18万人から最大23万人にまで増員する可能性があると明らかにした。北大西洋条約機構(NATO)の戦力増強の取り組みが背景にある。 だが、徴兵制が2011年に停止された後、軍は人員の確保に苦労しており、現時点では目標を約2万人下回っている。 ショルツ政権は6日、兵員確保に資する新たな兵役モデルを閣議決定し、来年5月の施行を目指している。新たなモデルでは、アンケートを元に4~5万人を徴兵検査に呼び、そのうち5000人に少なくとも6カ月の基礎的な軍事訓練に従事するよう促す。参加者には最大で月額2000ユーロ(約32万6000円)を支給する予定だ。