絶滅メディア博物館で触れる「つわものソニーの夢の跡」
本日はよろしくお願いいたします。ソニーのデジタルカメラの誕生から現在までを書いた『ソニー デジカメ戦記』を編集した際に、当時の実機に触れることができるこの「絶滅メディア博物館」には、何度もお邪魔しまして。 【関連画像】川井 拓也(かわい・たくや)絶滅メディア博物館長。1970年生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。TV-CF制作会社「太陽企画」ではCF制作のみならずCG制作・映画制作・衛星放送番組制作・デジタルコンテンツ制作など多様なプロジェクトに関わる。2001年に退社後はデジタルハリウッド大学院の開校から5年間教授としてクロスメディア論を担当。2003年に株式会社ヒマナイヌを設立。2009年からはインターネットライブ配信に軸足を置き出張配信ユニット「LiveNinja」として各地で活躍。 「絶滅メディア博物館」館長 川井拓也さん(以下、川井):いえいえどういたしまして、本も読ませていただきました。よろしくお願いいたします。 改めてになりますが「絶滅メディア博物館」というインパクトのある名前は、どういうところから付けたんでしょう。 ●紙と石以外のメディアはすべて絶滅します 川井:この名前は2022年に僕の中で下りてきたんですが、その前は「ガジェット博物館」にしようか、「20世紀アナログ館」にしようか、「歴史的カメラ博物館」にしようかと、いろいろ悩んでいたんですけど。 なるほど。 川井:でも、カメラって言っちゃったらカメラしか集められないし、パソコンと言うとパソコンだけだし。「そうじゃないんだよな」と悩んでいたわけです。その頃、たまたまフロッピーディスクとかxDピクチャーカードなどの記録メディアも集めようと思いついて、「皆さん、お手元にある絶滅したメディアを寄贈してください」と呼びかけたんですね。 川井:そうしたら結構盛り上がって。「MOだったら引き出しの中にあるよ」「じゃあ、ZIP、送りますよ!」「サイクエスト、ある?」「ORB(オーブ)は?」と、続々と申し出がありまして。 「それもこれも持ってないです」と、どんどんもらっているうちに、「ああ、『絶滅メディア』というくくりなら、記録メディアを使うハード側のカメラもウォークマンもパソコンも入る。いや、雑誌も入るし新聞も入る。絶滅するメディアは増える一方だから、収蔵品もどんどん増えていくな!」と思ったわけです。 記録しておくものはすべてメディアだと。 川井:そして、すべてのメディアはいずれ絶滅するわけです。紙と石以外のものはね。例えば僕らも自分の記録物はたくさんあるけれど、ビデオテープが物理的に残っていても、もう絶滅のカウントダウンが始まっていますよね。そしてDVDやBlu-rayが後を追うわけです。ハードディスク、SDカード、SSDもいずれは。 メディアが物理的に残っていても、再生する機械の入手が難しくなりますからね。 川井:はい。入手してまで見ようとする人がいるかどうか、も重要ですね。 確かに。私が昔のテレビ番組を録画したビデオテープなんて、家族を含めて誰も見ないでしょうね(笑)。 川井:メディアというものは、すべてそういう刹那的なものであることを宿命づけられているんじゃないか。なので、くくり方としてはいいかなと。 そして「絶滅」と言いながらも、メーカーが何億円も何十億円もかけて、人も時間も費やして開発したものじゃないですか。 一つ一つのメディアが、デジカメが、カムコーダーが、そうですよね。