専門家が教える「先延ばしする人」「すぐやる人」で分かれる脳の使い方
締切ギリギリまで動けない。集中力がすぐ途切れてしまい、やりたい作業が一向に進まない.....「先延ばしグセ」は多くの人にとって積年の悩みかもしれません。 メンタルコーチの大平信孝さんは、先延ばしグセの原因は本人の性格ではなく"脳の仕組み"が関係していると分析します。2021年に出版した著書『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ』(かんき出版)は20万部を突破し、同じ悩みを抱える人に変わるきっかけを与えてきました。そんな大平さんに、先延ばしグセを無理なく治す方法をお聞きしました。 取材・執筆:片平奈々子(PHPオンライン編集部)
「先延ばしグセ」の正体
――「先延ばしグセ」に悩む人は数多くいます。PHPオンラインでも関連の記事を配信する度に反響があり、世間の関心の高さに驚きます。仕事のタスクや家事など、すぐにやった方が良いことを、なぜ先延ばしにしてしまうのでしょうか? 【大平】原因は"脳の仕組み"ですね。「先延ばしグセ」は能力や性格的な問題が原因ではありません。元々めんどくさがり屋な脳の性質が関係しています。そのため、つい物事を後回しにしてしまう自分を責める必要はないんです。 脳は本来、変化を嫌うものです。防衛本能があるので、今まで生き延びてこれた思考や行動パターンを変えたがりません。命に別状がない限り現状維持を好みます。 "先延ばしをやめる方法"は調べたら沢山出てきますが、それに挑戦してもなかなか先延ばしを撃退できないのは脳が急な変化を嫌うことが原因です。 ――脳の仕組み上、仕方ないことなのですね。それでもやはり「すぐやる人」も存在すると思います。そんな人にはどのような特徴がありますか? 【大平】「すぐやる人」は脳の"側坐核"がうまく使えている人です。側坐核を刺激すればドーパミンが放出されます。ドーパミンは脳内で興奮や意欲を生み出す物質で、それによって「やる気スイッチ」が入ると言われています。 「すぐやる人」は熱血で気合と根性に満ちているイメージを持たれるかもしれませんが、実は脳のメカニズムをうまく活用している人が多いように思います。 ――「先延ばしする人」と「すぐやる人」とでは、脳の使い方に差があったのですね。では、すぐに行動できる人にはどのようなメリットがあるのでしょう。 【大平】今は変化が激しく、正解が一つと言えない時代にあります。先行きの不透明感が強いので、まず試してみて反応を見てやり方を変えて...と繰り返し行動を起こせる人が有利になるでしょう。完成形を求めて計画を練っているうちに、世の中はどんどん変わってしまいますからね。 Amazon創設者のジェフ・ベゾスも過去のインタビューで、"ストレスは主に、自分がある程度コントロールできるものに対して行動を起こさないことから来る"と語っていました。成功を目指すなら、柔軟に動く力が何より重要になるのだと思います。