【共同通信杯回顧】キレのあるキズナ産駒ジャスティンミラノ 距離のメド立ったジャンタルマンタル
たかが200m、されど200m
1994年ナリタブライアンを最後に2歳GⅠ馬で共同通信杯を勝った馬は出ていない。この歴史は主に朝日杯FS王者を指す。06年フサイチリシャール、19年アドマイヤマーズは2着。みんな、マイルから1800mのたった200mの距離延長に勝利を阻まれた。ジャンタルマンタルは30年ぶりの記録更新を期待された。当然、ファンのなかでも20代は記憶になく、40代でも早熟な競馬ファンでないと目撃していない。たかが200m、されど200m。ジャンタルマンタルが2着に敗れ、改めて距離の違いが繊細であることを知る。同時にナリタブライアンの偉大さもうかがわせた。 【京都記念2024 推奨馬】パワー型で時計のかかる馬場は歓迎、単勝回収率239%の好データ該当! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 敗れたジャンタルマンタルとて、内容的に悲観することはなにもない。なぜなら、共同通信杯を選ぶにあたり、陣営にはいくつかの課題があったはずだからだ。 まずは輸送。関東への輸送でジャンタルマンタルがどんな反応を示すか。これはやってみないと分からない。昨今は牧場と頻繁に行き来するので、かつてほど輸送を苦にする馬は減ったが、トレセン~牧場の往復と、競馬の輸送は違う。前者は輸送後に様子を見る時間があり、場合によっては落ち着かせる余裕がある。対して競馬の輸送は前日に輸送し、一泊して出走する。整える時間はほぼない。まして競馬後の疲れた状態でも、休んでリフレッシュした状態でもない。調教を施し、仕上げた研ぎ澄まされた状況下で行われる。実戦の輸送を試す機会は本番前にほしい。 もうひとつは距離だ。緩急が少なく、一定のスピードで走るマイル戦に対し、1800mはどこかで緩む区間があり、そこでリラックスし、最後の末脚に向け温存しないと乗り切れない。されど200mを克服できれば、2000mへのメドが立つ。折り合いを欠くようなら本番までに対処できる。輸送も距離も本番一発勝負で裏目に出てしまえば、それまで。クラシックは生涯一度。次はない。
キレのあるキズナ産駒ジャスティンミラノ
さらに東京はこれから先、大レースの舞台となる競馬場だ。GⅠで初コースより、早い段階で経験させておきたい。東京はほかの競馬場とはスケールが違う。そこに負けない馬づくりをするにあたり、経験することは大事だ。 これら課題の先に勝利はある。賞金の心配はもはやなく、まずは課題に対してジャンタルマンタルがどう反応するかを見る必要があった。最後600m11.4-10.9-10.8、33.1。東京特有の瞬発力勝負に対応できるメドは立った。序盤から流れに乗って走る姿は合格といっていい。 そんなトライアル仕様とはいえ、ジャンタルマンタルをジャスティンミラノは完封した。1戦1勝馬にとって皐月賞参戦を見据えれば、共同通信杯出走は勝負のレース。最高の結果を手にした。まず飛ばすことはない田辺裕信騎手が乗るパワーホールが先手を奪い、見るからにスローペース。ジャスティンミラノは向正面で2番手をとった。鞍上戸崎圭太騎手のファインプレーだ。ラストは上記の通り10秒台連発の究極の上がり勝負になり、位置取りの優位性がなければ乗り切れない流れになった。味方にできる要素はきちんと味方につける。名手の腕が冴えた。 キズナ産駒は牝馬だと切れるが、牡馬はパワー型が多い。10秒台連発を乗り切るキズナ産駒の牡馬は珍しく、ジャスティンミラノは同産駒の進化形ではないか。産駒の弱点を配合や調教で克服していくノーザンファームと友道康夫厩舎の強さを感じる。ジャスティンミラノは2戦で上がり33.4、32.6を記録した。好位から速い上がりを使うのは最大の強みになる。