「あいつに惚れないわけがない」 英国ファンの心鷲掴み…28歳日本人FWが愛される理由【現地発コラム】
「とにかく成長しながら、ゴールはしっかり取り続けたい」
「すべてはサポーターたちのおかげ」とは、第5節後にクラブ公式サイトのインタビューに答えた大橋の発言だが、海外初挑戦であることを考えればなおさら、上々のフィット感はピッチ上で戦いをともにするチームメイトたちとの間にも言える。 「みんなコミュニケーションをよく取っていますし、凄くチームとしての一体感、ファミリーっていう感じがあるのでありがたいことです。そのなかでもっと、フォワードとして(ボールが)欲しい場面だったり、そういうのを共有しながら、もっとゴールに近づく回数を増やしたいと思います」 途中出場となった今回も、大橋はオフ・ザ・ボールでの動きの良さや速さを含めて、グアイとは異なる持ち味を窺わせた。 「チームでの争いもありますし、そのなかでしっかり結果を残していきたい。もちろん、(向上を図るべき点は)いろいろありますし、考えながら毎日トライしているつもりなので、とにかく成長しながら、ゴールはしっかり取り続けたい」 大橋が、ステップアップを期して移籍したブラックバーンには、24チーム中19位で終えた昨季よりも順位を下げるとする開幕前の見方もあった。しかしながら、欧州でチャンピオンシップほど予想が難しいリーグは、楽勝カードなど存在しないと言われるプレミアを含めてもほかにないのではないか? 今季も、まだシーズンの4分の1程度を消化した時点ではあるものの、下馬評では優勝候補に挙げる声が多かったミドルズブラとルートン・タウンが、それぞれ9位と22位で第12節を終えている。そして、ブラックバーンは6位。これが、チャンピオンシップの厳しさでもあり、醍醐味でもある。 ワトフォード戦では、ペナルティスポットからのワンチャンスをものにした敵に勝利を持っていかれた。だが、責任感も自覚もある大橋が、ゴールというストライカーとしての結果を出していけば、勝利というチームとしての結果も近づく。 [著者プロフィール] 山中 忍(やまなか・しのぶ)/1966年生まれ。青山学院大学卒。94年に渡欧し、駐在員からフリーライターとなる。第二の故郷である西ロンドンのチェルシーをはじめ、サッカーの母国におけるピッチ内外での関心事を、時には自らの言葉で、時には訳文として綴る。英国スポーツ記者協会およびフットボールライター協会会員。著書に『川口能活 証』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『夢と失望のスリーライオンズ』、『バルサ・コンプレックス』(ソル・メディア)などがある。
山中 忍 / Shinobu Yamanaka