「あいつに惚れないわけがない」 英国ファンの心鷲掴み…28歳日本人FWが愛される理由【現地発コラム】
多彩なフィニッシュパターンと働きぶりが掴んだファンの心
チャンスの数が限られるピッチ上では特に、ネットを揺らす仕事を本職とするFW陣の責任は重い。 ブラックバーンには2度、先制の機会があった。セットプレーの流れから訪れた1度目はゴール枠に阻まれたが、思い切り蹴り込もうとしたのはCBのドミニク・ハイアムだった。 しかし、2度目の場面でシュートがバーの上を越えたのは、トップ下のアンドレアス・バイマン。ベテランの今季新戦力は、ゴール前に抜けたあとの強すぎたタッチが悔やまれる。 その直後から約36分間、得点を期待された大橋も次のように語っている。 「今日に関しては、チャンスが少なかったとは思わないですし、本当、フォワードとしてどの試合も決めなきゃいけないと思います。そこにこだわりを持ってやっていきたい」 確かに、大橋は投入1分後に始まって3回、シュートを打っている。右足ミドルと、ヘディング2本。後半37分の3本目などは、ループ状のヘディングシュートで相手GKの頭越しにファーサイドへという狙いも賢明に思えたが、先立つ2本と同じく枠を外れた。 いずれも、決定機と呼べるまでのチャンスではなかった。それでも自己に厳しい発言は、ホームでウェスト・ブロミッジとスコアレスドローに終わった前節での枠外が意識のなかにあったのかもしれない。ライン越しのパスに反応し、ファーストタッチも申し分なかったが、続いてバウンドに合わせたはずのボレーはニアポストの外へと向かった。 とはいえ、マイボール時にはセンターフォワード(CF)として前線でタメを作り、相手ボール時には効果的なプレッシングを欠かさない働きぶりは、総合的に10点満点で7、8点を与えても良い出来だった。しかし、国内メディアのレポートに、「絶好機を逃した」という類の表現が多かったことは言うまでもない。 続くワトフォード戦でのベンチスタートは、4-2-3-1システムの最前線で83分間をこなしてから中2日という日程に加え、敵の後方2列には身体の大きな選手が揃っている事実もあったのだろう。やはり今季の新FWで、よりフィジカルに恵まれたマクタル・グアイがスタメンに名を連ねている。 だが、1トップで先発したセネガル人CFが存在感を示したとは言い難い。59分間でのシュートは2本。連係にしても、パス成功率は4割台前半に留まった。 振り返ってみれば、今年2月からのユースタス体制下では、昨季後半戦でも、チャンスを確実にものにできず、チームパフォーマンスに結果が伴わない試合が複数あった。そのチームに加わるや否や、違いを見せ始めていた新戦力が大橋だ。 開幕節ダービー戦(4-2)では、クールなチップキックによる初ゴールで、自らデビュー戦に華を添えた。翌節ノリッジ戦(2-2)終盤の同点ゴールは、ダイビングヘッド風。第5節ブリストル・シティ戦(3-0)での2ゴールは、それぞれ右足と左足で対角線上のゴール上隅に放り込んでみせた。 フィニッシュのバラエティーも豊富な決定力の持ち主とくれば、ファンが「あいつに惚れないわけがない!」と言うのももっともだ。ワトフォード戦の会場に向かう途中、まだキックオフまで2時間近くあったのでうろついていたのか、ブラックバーンのチームカラーである青白ツートンのユニフォームを着て、逆にスタジアムのほうから歩いて来た青年に声をかけ、「大橋、どう思う?」と尋ねた際の即答だった。