被疑者は「海外逃亡」すれば“捜査が及ばない”は本当? もし「一生帰国しない」選択をしたら…【弁護士解説】
海外逃亡により罪は重くなるのか?
ーー海外逃亡をした場合、しなかった場合と比べ罪が重くなることはありますか。 荒木弁護士: 海外逃亡それ自体が直ちに刑罰を加重するわけではありません。 しかし、逃亡が捜査・訴追・裁判手続を著しく困難にさせたとして、裁判所が量刑上の情状として考慮する可能性は十分にあります。 そのため、結果として、逃亡期間や行為によって刑が重くなる可能性は否定できません。 ーー高橋氏は帰国しなければ逮捕されなかったのではないかといわれています。実際、一生帰国しなかった場合、どうなるのでしょうか。 荒木弁護士: 仮に被疑者が永久に帰国しないとすれば、日本での身柄拘束は原則として不可能となります。 いわば、海外に滞在し続けることで実質的に日本の刑事手続から逃れ続けることも理論上はあり得ます。
捕まるとわかっていても帰国する心理
ーー高橋氏については、ネット上のコメントでも「米国人が米国でしたことを日本の法律で裁くのも疑問だ」という指摘が目立ちました。この辺りはどういったロジックになるのでしょうか。 荒木弁護士: 高橋氏の事案では、わいせつ電磁的記録媒体陳列の疑いで逮捕されています。 「FC2」というサイト内でわいせつな動画が不特定多数に閲覧可能な状態にあったところ、「閲覧された場所」が日本である以上、日本人利用者が日本国内で該当するコンテンツにアクセスした時点で、日本法の適用可能性が生じます。 このように国際的なサービス運営であっても、日本国内で法律違反となる行為が行われたと評価されれば、日本法に基づいて裁かれることは十分あり得ます。 ーー両者とも結局、身内を心配して帰国したともいわれています。弁護士として、被疑者の海外逃亡についてどのような考えかお聞かせください。 荒木弁護士: 日本に大切な家族や身内がいる場合、帰国して直接会える環境に身を置きたいと考えるのは、自然なことだと思います。 そもそも日本で罪を犯したのであれば、その責任は日本で果たすべきです。海外逃亡は、捜査や裁判を避ける手段として一見有効に思えるかもしれませんが、現実には長期にわたり日本での家族関係や生活基盤を断絶することになります。 このようなことから、大切な人々のためにも、正当な法的手続きを経て罪を償うことが望ましいと私は考えています。
弁護士JP編集部