7人制ラグビーリオ五輪代表 人気3選手落選の裏側
以後、チームは最後の実戦をかねたオーストラリア合宿、最終調整のための鹿児島合宿を実施した。そんななか最も合流が遅かった山田は、左ふくらはぎの肉離れでオーストラリア合宿を欠席。壮行会に出ていない豊島が代打を務めることとなった。 山田本人としては、本番を見据えてコンディションを整えたかった。昨秋のイングランド大会時も、8月に股関節を痛めながらぶっつけ本番で9月19日の予選プール初戦を迎えている(場所はブライトンコミュニティスタジアム。南アフリカ代表に34-32で歴史的勝利)。 それでも7月17日、瀬川は山田を外すと決めた。山田が務めるフッカーという位置に豊島を入れることは、6月29日の決断式がなければ一般的な「欠員補充」だった。 26日までの鹿児島合宿を取材する記者らによれば、藤田と松井は怪我以外の理由で落選したとされる。2人とも攻撃時に独自の魅力を放つが、チーム戦術遂行の歯車としては別の選手の方が最適…。少なくとも瀬川ヘッドコーチは、そう判断したのだろう。 東芝の監督として2008、09年のトップリーグで優勝した頃から、瀬川ヘッドコーチは純粋なラグビーマッドとして知られている。いわゆる「空気」を読んだ選手選考とは、無縁の領域に生きる人なのだ。 人気選手の落選で、各種メディアはいわゆる「盛り上げ方」に苦心するだろう。何よりイングランド大会以後にファンになった人にとっては、男子セブンズ代表に知っている選手を探すこと自体が一苦労かもしれない。桑水流ら苦労してナショナルチームを支えた選手には失礼な見解だが、古今東西、コアユーザーとライトユーザーの間の意識レベルの隔たりは大きい。 裏を返せば、今度のメンバーリングは、特定の「アイコン」に依拠しない観方を作るチャンスかもしれない。イングランド大会時は五郎丸歩を中心に露出したが、五郎丸の知名度ほど競技文化が豊かにならないことに五郎丸本人が辟易するなど、弊害も生じていた。 今回の男子セブンズ代表では、ボールキープの起点となる空中戦では桑水流主将が身体を張る。攻撃中に大きく前へ出られるのは、ムードメーカーでもあるレメキと北海道バーバリアンズというクラブにいたロテ トゥキリ。ゲームを動かすのは坂井克行前主将だ。 7対7のボールゲームで、体格差に劣る日本がどう組織力を示すか…。7人制ラグビーという競技での勝ち方そのものにフォーカスされたい。 (文責・向風見也/ラグビーライター)