なぜROICはWACCと比較しなければ無意味なのか?ドラッカーが指摘する「資本のコストに見合うだけの利益」とは?
企業を取り巻く環境が激しく変わる現代において、経営者は「社会課題への対応」や「新規事業の創造」など、前例がないようなさまざまな課題に向き合っていくことが求められる。そのような「変化の時代」にあって、意思決定のよりどころとすべき本質とは何だろうか。本連載では『成果をあげる経営陣は「ここ」がぶれない 今こそ必要なドラッカーの教え』(國貞克則著/朝日新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。「マネジメントの父」と呼ばれる経営学の大家・ドラッカーの教えを元に、刻々と変わり続ける時代において、会社役員がなすべき役割や、考え方の軸について論じる。 資本主義社会における事業のプロセス 第4回では、ROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)の本質的な意味を解説しながら、ドラッカーが指摘する「資本のコストに見合うだけの利益」について考える。 ■ なぜいまROIC(投下資本利益率)なのか この配当の仕組みがわかれば、資本主義社会の事業のプロセスがPLとBSで表されているということもよくわかります。 下図(図表3-3)をご覧ください。下図は右がPL左がBSで、各部分の金額の大きさが図の大きさで表されていると思ってください。では、下図を見ながら読み進めてください。 資本主義社会の事業は自己資本、つまり株主の資本金からスタートします。しかし、資本金だけで事業を行おうとすると、資本金の額だけの資産しか調達できません。 この会社の経営者が金融機関に行って融資のお願いをし、それが承認されれば金融機関から借入金という他人資本が会社に入ってきます。 この自己資本と他人資本を使ってたくさんの資産を調達し、そのたくさんの資産でたくさんの売上高を生み出し、その売上高からすべての費用を差し引くと当期純利益が残ります。 資本主義社会の事業のプロセスとは、株主の自己資本からスタートした事業が、事業というプロセスを通して当期純利益という利息を生み出し、その当期純利益がまた株主の自己資本を増やしていくということなのです。