『孤独のグルメ』ドラマが始まり、原作者・久住昌之が困ったことがあった「松重五郎の声がする」
「僕がやろうかなと思うんですけど、大丈夫でしょうか?」
――映画(『劇映画 孤独のグルメ』)化にあたって、監督・脚本・主演の松重豊さんとは、どんな話をされましたか? 久住:丁寧な長いメールをもらいました。松重さんは最初ポン・ジュノ監督に打診したそうですが、スケジュール的な理由で実現まで至らず。そこで日本の監督をいろいろ考えたけれどしっくりこなくて、それだったらドラマと一番長い時間接してきた僕がやろうかなと思うんですけど、大丈夫でしょうか? というような内容でした。僕は、おお、その手があったか! と思い「それが一番いいと思います」と伝えました。 ――映画はいかがでしたか? 久住:よかったです。「よかった、これはみんなおもしろいって言ってくれそうだ」とほっとしました。最初に脚本を読んだときは、ちょっと要素を盛り込みすぎじゃないか、松重さんは初監督で力が入って、あれもこれも詰め込みすぎたんじゃないかと心配になりました。だけど、試写を観たらスッキリしてて、何より映画として軽いのがよかった。大感動! みたいな大げさなところがなくて、ただおもしろい。それがいい。
世界に「五郎ちゃんごっこ」が広がれば戦争も減るのでは
――30周年を記念して、さまざまな作家さんが漫画やエッセイを寄稿したトリビュートブックも刊行されました。 久住:皆さん、その人らしさが感じられる作品ばかりでおもしろかったです。谷口ジローさんの井之頭五郎がいて、松重豊さんの井之頭五郎もいる。江口寿史さんも浦沢直樹さんも井之頭五郎になっている。皆さん、結局「五郎ちゃんごっこ」をしてるんですね。映画が外国でも公開されたら、世界に「五郎ちゃんごっこ」が広がらないですかね。そしたら戦争も少し減るのでは、なんて。 【久住昌之】 1958年、東京都出身。漫画家、音楽家。1981年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として漫画家デビュー。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『かっこいいスキヤキ』(泉昌之名義)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など多数 取材・文/山脇麻生 撮影/加藤 岳
日刊SPA!