【エビステーキカツ】もう二度と会えないかもしれない。所沢の定食屋の日替わりメニュー「エビステーキカツセット」に感動:パリッコ『今週のハマりメシ』第158回
さらに進み、プロぺ通りを出て少し歩いた横道にあるのが、御三家最後の1軒、町中華の「栄華」。 初めて来てその佇まいを見た時は、あまりの味わいに感動したものだが、今もまったく変わった様子がない。店内もまた、どこかで時代が止まってしまったとしか思えない空間で最高なんだよなぁ。 う~んう~ん、チューハイ100円引きの百味もいいし、ここまで来たら入らないのはもったいないい栄華もいいし、どうしようどうしよう......。 って、いやいやいや、ちょっと思い出してみてくださいよ。気になるにもほどがあるでしょう。もしこの機会を逃したら、今後しばらく眠れなくなるでしょう。なにが? って、さっきのくるまの日替わりにあった「エビステーキカツ」ですよ! 聞いたことない。どんなもの!? それ。 というわけで、今日は一択で、くるまへ向かうことにしよう。 入店し、定番の「ホッピー【白】セット」(税込450円)。そして迷いなく「エビステーキカツセット」(890円)。麺類が、うどん、そば、ラーメン、ザル中華、そうめんから選べ、今日はラーメンを選んでみることにした。セットというからにはごはんもついてくると想像され、まだどんな感じかはわからないけど、とりあえず自分にはちょっと多そうだ。そこで店員さんに「これって、ごはんもつくんですかね?」と聞くと「はい、小さめのごはんが」とのこと。ならばそのままお願いしてみるか。 それにしてもくるまのメニュー数、何度来ても圧巻だ。定食のページだけでもずらり2ページに渡るし、単品も酒類も豊富だから飲みにもばっちり。さらに、想像しうるかぎりのものがすべてあるとすら思える、そば、うどんごはんもの類や、専門店くらいの品数がある中華料理たち。きっと一生のうちに全制覇できることはないんだろうなと思うと少し寂しく、近所の人がうらやましくなる。 そんな僕のちょっとした感慨をぶち壊してくれたのは、やってきたエビステーキカツセットのインパクトだった。 巨大なお盆の上に、普通にラーメン屋さんで出てくるようなサイズの醤油ラーメンがどんとのっている。その下にごはん。確かに少なめではあるけれど、ラーメンと合わせただけで僕にはじゅうぶんなボリュームだ。その横の3つに仕切られた皿がまたでかい。サラダ、ひじき煮、ちょこんとかわいらしい漬けもの、そしてなるほど、こういうものか、エビステーキカツ。 では手始めに、なんとも魅力的なルックスのラーメンからいってみるか。 かなり色の濃いスープ。これをひと口すすると、見た目どおりにきりっと塩気強めで、しかも最初からかなりコショウが効かせてあるようで、ピリリと刺激的。それを鶏ガラの風味がまとめ、これはいい。 そんなスープをよく吸ったようにも見えるぷりぷりの中太ちぢれ麺をずずーっとやると、小麦やかんすいの風味とスープの味が口いっぱいに広がって、ものすごく幸せだ。箸で持ち上げるだけで崩れはじめてしまうとろとろのチャーシューも、食べごたえのあるメンマもうまい。このラーメンだけで定食の値段である890円でも、誰からも異論は出ないんじゃないだろうか。 と、しばしラーメンを堪能したら、お腹がいっぱいになりすぎないうち、エビステーキカツの正体をあばいてやろう。
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