視聴者の反応は「予想を超えた喜び」…大河ドラマ『光る君へ』制作統括が語る、紫式部や源氏物語のすごさ
『源氏物語』のすごさ「誰1人自分のことを幸せだと思っていない」
──清少納言と定子(高畑充希)の関係とは、また違うものですか? 『光る君へ』の清少納言は、本当に定子に心酔して、彼女のためだけに生きた人物として描きましたけど、まひろは生まれついての作家だから、相手に親しみは持っても、どこか客観視するような面を忘れないと思います。一つのことに、自分の全人生をかけられない。だからこそ生きる難しさや大変さ、ややこしさを抱えて生きているのが、まひろかなあと。 でも今を生きている人も、みんなそうじゃないかと思うんです。やはり『源氏物語』のすごいところって、登場人物がすごく裕福で愛されていても、誰一人自分のことを「幸せだ」とは、まったく思ってないことなんですね。 ──「本当の幸せはここにはないんじゃないか」という、漠然とした不安ですよね。それは確かに、多くの人が多少なりとも感じていることだと思います。 なんか本当に、現在の自分たちをそこに見るようなところが一番すごいのかなと、私は思ったりするので。まひろ自身もそれを体現して、終盤はやっていくことになります。 今後の展開では、ちょうど武士の時代の萌芽が、かすかに出てきます。『光る君へ』は恋愛面が注目されていますけど、大石先生は当初から「時代のうねりもなるべく描きたい」とおっしゃっていて、まひろという作家が生きている間に、そのきざしを感じておきたいなと。その辺りが、終盤では描かれていくはずです。 ──道長との関係だけでなく、まひろが時代の予兆をどうとらえるかも見どころということですね。最後に内田さんが、個人的に好きな登場人物はいらっしゃいますか? 実は私、(藤原)道綱が好きです。史実では、ちょっと能力が足りないみたいな書き方がされてるんですけど、上地(雄輔)さんが演じると、このなかで心から人のことを心配しているのは、道綱だけじゃないか? と思ったりします(笑)。上地さんご自身も、私が信頼を置いている俳優さんのお1人なんですよ。 道長だったり、(藤原)実資(秋山竜次)だったり、ご自身が相対するのはどういう方かなあ? というのを考えながらお芝居をされているので、すごく魅力を感じています。 【内田ゆき】 広島県出身。平成7年NHK入局。岡山局勤務を経て、平成11年に制作局ドラマ番組部に異動。以後一貫してドラマ制作に携わる。プロデューサーとしては、連続テレビ小説『カーネーション』『ごちそうさん』などを担当。制作統括としては、ドラマ10『ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~』、土曜時代ドラマ『アシガール』、連続テレビ小説『スカーレット』、土曜ドラマ『六畳間のピアノマン』『わげもん~長崎通訳異聞~』などを手掛ける。