【クイーンS】ノーザンファーム生産馬が最多9勝 北の牝馬限定重賞を「記録」で振り返る
鋭い末脚で波乱を巻き起こしたピエナビーナス
ノーザンファーム生産馬のあげた9勝のうち、単勝オッズ1~2倍台が4頭。ほかの5勝も一桁オッズで収まっているように、人気に応えての勝利が多い。社台ファーム生産馬も6勝のうち5勝は単勝オッズ一桁台だった。ただ、残りの1頭である2020年レッドアネモスは43.7倍で勝利をあげた。これは期間内で見ても2位の記録である。 過去、人気薄でのクイーンS勝利馬を順に並べていくと、3位が2003年単勝35.2倍オースミハルカ、2位が上述した2020年同43.7倍レッドアネモス、1位が2009年同58.7倍ピエナビーナスとなる。 オースミハルカはデビュー勝ちをおさめるなど札幌で3戦して馬券圏内をはずしたことがなかったが、春のクラシックで苦戦したこともあり評価をさげていた。古馬のファインモーション、ダイヤモンドビコーが58kg、テイエムオーシャンが59kgを背負うなか、52kgの軽斤量を味方に逃げ切った。 レッドアネモスは3歳5月に白百合Sを制して以降、5戦連続で掲示板外と苦戦が続いていたが、初の北海道で激走。2着ビーチサンバとともに友道康夫厩舎によるワンツーを果たした。 ピエナビーナスは多くのファンにとって完全に盲点だった激走馬。当時4勝馬だったが、降級制度があった時代であり、まだ条件馬(現3勝クラス)だった。過去にあげている4勝全てが芝1200m戦で、芝1800m戦は4戦して全て着外。直近も15、14、6着と掲示板外で、格上挑戦のクイーンSは実力的に厳しいと思われていた。メンバーもレジネッタやザレマ、ムードインディゴ、ヤマニンメルベイユなど実力派が揃っていた一戦。それを道中8番手から上がり最速で差し切って多くのファンを驚かせた。 振り返ればその前走も上がり最速で前を行くメイショウベルーガにクビ差まで迫るなど才能の片鱗を見せていたこともあって、レース後に頭を抱えた穴党も少なくなかったことだろう。鞍上の古川吉洋騎手の思い切った騎乗も光った。その後、ピエナビーナスは勝利こそ挙げられなかったが、引退するまで牝馬重賞を盛り上げ続けた。繁殖としても新潟2歳Sで2着のウインオーディンなど素質馬を送り出し、その才能を改めて示している。 今年も各世代の素質馬が集う一戦。実力馬たちの激突を楽しみながら見守りたい。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん