時間がないのに「言葉だけ」… 繰り返された政治への期待と失望 拉致被害者家族の支援者に募る焦り【衆院選】
10月27日投開票の衆議院選挙では、複数の党が公約などで北朝鮮による拉致問題の解決を訴えている。横田めぐみさん=失踪当時(13)=、曽我ひとみさん(65)の拉致された地を含む新潟1区でも、候補者が演説で言及する場面はある。ただ、国政選挙のたびに公約に盛り込まれるが、目に見える進展はない。「本当に時間がない」。被害者家族を支える人たちは、政治への期待と失望を重ねた経験を胸に、論戦を見守った。 【年表】拉致問題を巡る主な動き 「全ての拉致被害者を救出できず、大変申し訳ない」。10月18日、新潟1区に含まれる佐渡市真野地区で、ある候補者が街頭演説した。 会場は曽我さんと母ミヨシさん=失踪当時(46)=の拉致現場近く。最前列で聞いた「曽我さん母娘を救う会」の臼木優会長(74)は「今まで通りの発言。それでも言ってもらえるだけありがたい」と複雑な表情を浮かべた。 これまで、面会した多くの国会議員が「解決します」と口にした。だが、進展はない。最近では選挙で言及されても「言葉だけ」と感じてしまうことがある。 会は2002年に発足した。署名活動や救出運動のシンボルであるブルーリボンづくりを続ける。 「北朝鮮は問題を風化させたいのかもしれない。でも、絶対に諦めない」。会員で、曽我さんの同級生の菊池敬一さん(65)は力を込める。一方、政治への期待を問うと「この20年、何を発信しても(事態は)動かなかった。何かを政治に望むというより、解決を信じる」と淡々と話した。 めぐみさんらの拉致を警察庁が認定したのが1997年。2002年に北朝鮮が拉致を認め、曽我さんら5人とその家族は帰国できたが、政府認定の他の被害者12人は、今も消息すら分からない。 警察庁の認定以降、首相は13回変わった=表参照=。曽我さんは今月、石破茂首相就任の際、被害者の親世代の高齢化を踏まえ「時間との戦いであると再三再四訴えてきた」との切実なコメントを出した。 めぐみさんの母早紀江さん(88)は、小渕恵三元首相から石破首相まで、全ての首相と面会してきた。「皆同じように『必ず頑張ります』とおっしゃる」。だが、めぐみさんとの再会は実現していない。 早紀江さんを支援する「あさがおの会」(川崎市)代表の森聡美さん(62)は「被害者家族だけでなく、支援者も高齢化してギリギリの状態」と話す。 会は、早紀江さんと夫の滋さん=20年に87歳で死去=を支えるため、同じマンションの住民で03年に設立。現在約170人が登録している。 ただ「こんなに長く活動するとは思っていなかった」(森さん)。高齢による体調不良などで参加できない人が増え、写真展の開催などが難しくなっている。 森さんは「早紀江さんの様子からも、本当に時間がないと感じる。すぐにでも日朝首脳会談を断行できるような政権になってほしい」と声を強めた。
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