警察による個人情報の収集・提供めぐる控訴審、あす判決 名古屋高裁
岐阜県大垣市で計画された風力発電施設の建設を巡り、県警大垣署が住民の個人情報を収集し、業者に提供したのは違法として、住民らが県に賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が13日、名古屋高裁で言い渡される。 【画像】反対住民の警察情報、なぜ民間業者に 「大垣署訴訟」が問うもの 一審・岐阜地裁判決などによると、署警備課の警察官3人は2013~14年、施設の建設を計画していた中部電力子会社「シーテック」と計4回情報交換。勉強会を開くなどした住民4人の氏名、病歴、過去の市民運動への関与などを伝え、シーテックが議事録を作成した。住民側は16年、プライバシーなどが侵害されたとして、県を提訴した。 22年の一審判決では、警察法で警察は犯罪の予防や捜査、秩序の維持などを責務とし、「万が一の事態に備えて情報収集するなどして予防手段の研究、準備も責務に含まれる」と示した。 そのうえで、住民らは勉強会を行っていたにすぎず、「秩序の維持に危害を及ぼすにはほど遠く、情報提供の必要性があったとは認めがたい」と指摘。情報提供は個人の私生活の自由を保障した憲法13条に基づく「プライバシー情報をみだりに第三者に提供されない自由」を侵害し、違法と認定した。 判決後、原告弁護団は「裁判所が公安警察の活動を違法とするのは極めてまれ」と述べた。 一方で情報収集は、「仮に市民運動に発展した場合、公共の安全と秩序の維持を害する事態に発展する危険性はないとはいえない」として、違法性を否定した。 ■「収集」の違法性 再び焦点に 控訴審では、提供とともに収集も違法性があるかなどが争点となった。 原告側は、一審判決は市民運動への偏見があるとし、運動への展開可能性は収集を正当化する理由にはあたらないなどとし、提供だけでなく収集も違法と認めるべきだと主張した。また一審同様に県と国に収集した情報の抹消も求めた。 一方で県側は、警察は犯罪の予防などを目的に関係機関と意見交換し、収集活動を行うことがあると反論。「収集には必要な範囲の提供が含まれ得る」として、提供の必要性を認めない一審判決は矛盾しているなどと指摘した。 この問題は朝日新聞の報道で判明し、治安やテロ対策を担う公安警察の活動実態が明らかになった事例として注目された。(渡辺杏果)
朝日新聞社