「人には公と、私的と、秘密の生涯がある」文豪ガルシア=マルケスの言葉に見る「人間らしい」生き方とは?
マルケスの3つの生涯とは、どんなものだったのだろうか。公の人生については、すでに知られているように、世界的な名作を生み出した文豪という評価を受け、次々に作品を生み出し、ベストセラー作家としても、文句のつけようのないノーベル文学賞作家としても、見事な生涯だった。 2つ目の私生活にしても、彼は愛妻メルセデスとは50年間の結婚生活を送り、ふたりの息子に恵まれている。 3つ目の秘密の生涯は、彼が87歳で亡くなった後、メキシコ人の女性ジャーナリストとの間に、隠し子がいたことが判明していて、女の子だったという。彼は終生その秘密を貫き通していた。 魔術師、といわれることを好んだマルケスの魔術は、テクノロジー全盛の現代においても、ベストセラー作家として再登場して、いまなおその魔術はとけていないようだ。
Gabriel García Márquez
1928年、コロンビア生まれ。退役軍人の祖父と土地の伝説に詳しい祖母に育てられ、戦争体験や迷信、伝承を身近に触れながら育ち、文学を志す。コロンビア国立大学法学科に進むが、政変に伴う混乱の中で転学、のちに生活難により中退。以降、雑誌記者、ジャーナリストとして活躍、55年にローマで現地記者をしながらイタリア国立映画実験センターで学び、のちにメキシコで映画監督としても活動することに。59年にはキューバにわたりフィデル・カストロの知遇を得、親交はお互いの晩年にまで続いた。代表作に『大佐に手紙は来ない』(61年)、『百年の孤独』(67年)、『族長の秋』(75年)、『予告された殺人の記録』(81年)など。82年にラテンアメリカで四人目となるノーベル文学賞を受賞。2014年にメキシコの自宅で逝去。
村上香住子 フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き! Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka