「オルカン」「S&P500」一辺倒にモヤモヤ感、投信のプロが明かすインデックス投資の死角
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は通称「オルカン」として知られ、純資産残高もトップクラスの人気ファンドだ。とりあえず「オルカン」か「S&P500」に投資しておけばいいという昨今の風潮に対し、国内の大手証券や投資運用会社などを渡り歩いた今福啓之氏は疑問を呈する。失敗する前に知っておきたい、オール・カントリーへの疑問点とインデックス投資の「チューニング」方法とは?※本稿は、今福啓之『投資信託業界歴30年の父親が娘とその夫に伝える資産形成の本音の話』(星海社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● オール・カントリー投信は 自動でうまくやってくれる仕組みではない では少し照れるが早速始めますか。投資信託の仕事で32年目の僕が、父親の最後のアドバイスとして結婚した娘とその夫2人にこんな話ができるのは、まぁありがたいことだよね。 巷ではまだ「やっぱりS&P500が最強!」「いやいや○○さんが本でオール・カントリー1本が賢いと言っていた!」という議論が盛んみたいだけど、そのモヤっとした心配からすると、「良くも悪くもGAFAM頼みという意味ではどっちもほとんど一緒だよな」というのが僕の理解。 「いやいや、オール・カントリーは国の調整をしてくれるから、今後のインドの成長なんかも押さえられるでしょ」と言うかもしれないけど、それは違う。 インドに限らず、色んな国の色んな企業を押さえてはいるけど、ファンド側が良きに計らって「調整してくれる」わけでは、まったくない。 左の上位10カ国でも右の10通貨でもわかる通り、インド株がオール・カントリー指数に占める比率は今1.6%しかない。 ということはつまり、もし今から1年間でインド株全体がドーンと2倍になったとしても、オール・カントリー指数に対しては1.6%分しか寄与できない。 2倍になるということは100%のリターンということなので、まさにその1.6%分。基準価額が1万円ならわずか160円の上昇でしかない。 インド株が2倍になった1年後には、オール・カントリーにおけるインド比率は、他の国の企業の株価動向にもよるけど、今の1.6%ではなく2%とかになっているかもしれないね。 それでもまだわずか2%なんだよね。しかし既にこの1年でインド株自体は2倍になってしまった。「おいしいところ」は終わってしまったかもしれない。 いやいや、まだまだこれから。次の1年もそこからさらに2倍になるかもしれないね。はい、確かに。だとしても、その100%上昇の恩恵は、指数に占めるインド比率である2%分の200円しか獲れないんだよね。 もし君たちがインドの今からの成長を資産運用に取り込みたいと思うのなら、オール・カントリーの中の1.6%の比率としてではなく、別途インド株のファンドをそれなりの金額で買わないと、その望みは叶わない。