こだわりの選書で地域に根ざす「独立系書店」や個性的な出版社が存在感…「本との出会い」演出
全国で書店が減少傾向にある中、こだわりの選書で地域に根ざす「独立系書店」の存在感が増している。読書の秋に、こうした書店や個性的な中小規模出版社の本を紹介し、本に関心を持ってもらおうと、福岡市・天神の福岡パルコで「BOOK MEETS FUKUOKA~本のもりのなかへ~」が開かれている。(後田ひろえ) 【写真】JR佐賀駅に「佐賀之書店」をオープンさせた直木賞作家の今村翔吾さん
福岡・天神でイベント 「本好きだが、書店の少ない地域で暮らしているので、珍しい本をたくさん手にとって選べるのは楽しい」。約700点の本が並ぶ会場で、宮崎県串間市から訪れた男性(72)は笑顔を見せた。福岡県内の独立系書店6店や全国の中小規模出版社37社が出展。直木賞作家の角田光代さんや歌人の松村由利子さんら文化人60人がおすすめの本を紹介する「本好き達人の『激オシ本』」のコーナーもある。
出展した出版社は、大型書店では見かけない個性的な本を出版している社が中心だ。例えば、「ロングライフデザイン」をテーマに、出版のほか雑貨や家具の物販、飲食業も展開している「D&DEPARTMENT」(東京)は、各地のガイド本を出しているが、編集者が現地で2か月間暮らすように旅をして、その土地に長く根付く食や観光施設、宿などを選定してレビューをつけて紹介する異色の内容だ。
“カフェから生まれた出版社”と銘打つ「クルミド出版」(東京)は、発行人の影山知明さん(51)が、経営するカフェで出会った客と本を作ろうという話になったことが出発点。「カフェはお店に来てもらわないと人に出会えないが、本は場所を越えて手にとってもらえるという魅力がある」と語り、「長く読み継がれる本」を理念に文学を中心に出版している。
イベントの仕掛け人の一人は、福岡市で独立系書店の先駆けとして知られる「ブックスキューブリック」代表の大井実さん(63)。これまでも本のイベント「ブックオカ」などの企画に携わっており「若者の本離れと言われる時代の中で、どんな本を読めばよいのかわからない人たちも多くいるはず。まずは、『こんな本があるよ』と手渡されるような感覚で本と出会ってほしい。ここを起点にぜひ個性的な書店巡りをしてもらえれば」と話している。