「増税メガネ」路線は継続…「骨太方針2024」が日本国民の貧困化と国家の弱体化を決定づけるこれだけの理由
財政規律を打ち破る国民的政治活動を
ただし、今回の骨太の方針には、以上の財政規律についての記述の直後に、申し訳程度に次のような文言もまた、記載されてはいる。 「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。機動的なマクロ経済運営を行いつつ潜在成長率の引上げに取り組む」 すなわち、PB規律は年間333億円キャップ規律があるが、そういう規律のため「重要な政策」ができなくなってはいけない、潜在成長率を引き上げるための財政支出は行わなければならない、という趣旨が一応は書かれているのである。 しかし、当方が常々主張している ・食料・資源・エネルギーの輸入補助金を通した「物価上昇抑制」 ・消費減税を通した「持続的な実質賃金引き上げ」と「デフレ脱却」 ・公共投資の拡大を通した「持続的な名目賃金引き上げ」と「デフレ脱却」 ・十分な当初予算拡充を通した「食糧自給率引き上げ」「エネルギー自給率引き上げ」「国土強靱化」 等は、いずれも極めて重要なものであるが、岸田氏が「そんなの重要だと僕は思いません」と言えば、全て実施できなくなることは事実である。 そして、岸田氏は、これまで「増税メガネ」的振る舞いを繰り返してきている一方で、上に述べたいずれの政策についても本格的に実施しようとはしていない。 つまり、「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という文言は、単なる、積極財政派を黙らせるための「お飾り」として言い訳程度に記載されているに過ぎない、というのが、現在の岸田内閣の立ち居振る舞いとなっているわけである。 誠にもって遺憾この上ない話であるが、この骨太方針が確定されれば、後はもう、日本を救うには、「重要な選択肢を狭めてはならないと骨太の方針に書かれてるじゃないか!」と声高に叫びながら、「重要な選択肢」の具体的内容を主張し続ける他ない。 そしてもちろん、岸田氏の「聞く耳」にそれが入って、それら政策が実施されるのなら全く構わないのだが、彼が全くやらないというのなら、それを実行される方に総理の座を譲り渡していただく他、日本が救われる道が無くなってしまう、ということになる。 かくして心ある日本国民は、政府や国会に残存しているはずの心ある政治家と共に、重要な政策が実施されるべく、岸田氏そして政府の動きを監視すると共に、彼らが不適切な振る舞いを見せる限り、徹底的に批判し続けねばならないのである。 それが不十分である限りにおいては、日本の「地獄行き」路線はもはや確定してしまっているのである。
藤井 聡(京都大学大学院工学研究科教授)