女性が32%の町も 突出して女性が少ない原発事故被災地 男性主体の復興に未来は #知り続ける
帰還の意向は世帯主が回答
内閣府の男女共同参画局は2020年、自治体に向けた「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」を作成した。復興計画の策定・改定時は「委員会の女性を3割以上にする」「住民一人一人を対象としたアンケート調査などで女性の意見を把握する」ことなどに取り組むべきだと盛り込んだ。また、きめ細かな復興や防災のためには「男女別データの収集や分析が必須だ」とも記している。 しかし、避難指示が出された福島県12市町村の住民を対象に復興庁が実施してきたアンケートでは、世帯主が回答する方式が13年度以降、現在も続く。帰還の意向や必要な施設を尋ねるもので、年平均約2800万円を費やす大規模な調査だ。近年は五つ前後の自治体で実施されている。 調査初年度の12年度は多くの自治体で全住民に調査票が配られ、回答者の男女比も半々で50代以下が約5割だった。それが13年度から全自治体で世帯主が回答する方式に切り替わると、回答者の7割前後を男性が占め、60代以上が大半になった。
「女性や若者の声聞けるのか」
土屋品子復興相は2月27日の閣議後記者会見で調査に触れ、「今後も被災者に寄り添い、しっかり一人一人の意向を聞く」と話した。 だが、双葉町の20代女性は取材に「同居する祖父か父が書いていると思うが、質問を見せてもらったことも回答内容を相談されたこともない」と話す。夫と暮らす富岡町の60代女性も「家族一人一人の帰還の意向や要望を書こうにも書けない。これでどうやって女性や若者の声を聞けるというのか」と首をかしげる。 この調査結果は、各自治体が策定する復興計画で、避難指示解除後の人口予測に使われてきた。複数の自治体で、世帯主の答えた帰還希望率をそのまま住民数に乗じて帰還人口を算出した。世帯主の男性に帰還の意向があるのに妻や子に意向がないため単身で帰還したり帰還を断念したりして、調査と実態の差が開いた可能性がある。 復興庁の担当者は「当時の担当ではなく詳細は知らないが、帰還は世帯単位で動くことが多いため、世帯回答に変わったのでは」と話し、今後、方式を変える予定もないという。