台湾語?それとも閩南(びんなん)語?…台湾で巻き起こる名称論争
日本が第二次大戦に負けたあと、大陸からやってきた国民党は、中国本土の言葉を、新たな公用語にした。しかし、日本統治時代も、国民党政権時代も、台湾の多くの庶民は、さきほど紹介した閩南語を日常的に使い続けてきた。その閩南語、今日では「台湾語」とも呼ばれている。 台湾全土で行われているテストの一つに、「閩南語能力検定試験」というものがある。台湾政府機関の一つ、教育省(=日本の文科省)が実施している。受検資格に国籍や年齢は関係ない。レベルによって6段階に分かれる。プロの通訳になろうという人から、この閩南語に関心があるという基礎的なレベルの人でも、受検できる。ヒアリングと会話のテストがある。 2010年から始まったのだが、年々人気を集め、昨年(=2023年)からはそれまでの年1回だった実施が、3月と8月の年2回に受検機会が増えた。多くの日本人も受検している。今年8月に行われる次の試験には1万8000人以上がチャレンジするという。 この検定試験の名称を、変更しようとする動きがある。つまり、現在の「閩南語能力検定試験」から「台湾・台湾語能力検定試験」に変えるというものだ。7月18日にこの計画が明らかになった。すでに台湾社会では「台湾語」と呼ばれるようになった「閩南語」を、正式に名称変更する動きだ。 現在の政権与党・民進党は中国と距離を置き、台湾独自の道を歩もうとしている。一方、主要な二つの野党は、中国との融和を進めたい考えだ。その野党が教育省の方針に異を唱え、このように反発している。 “「アメリカ人が使う言葉を、アメリカ語と呼ぶのか。彼らのルーツ、イギリスの言葉、つまりEnglish=英語ではないか」「名称の変更は『中国離れ』、『脱・中国』の動きそのものだ」” 台湾の議会で、与野党対立の一因になっている。実は、私がこの騒ぎを知ったのは、台湾からのニュースではない。中国の国営メディアで流れていた。中国サイドも、「民進党政権による『中国離れ』の一環だ」として、今回の動きに苛立っているようだ。