「仰天したということはない」フルトンが打ち明けた井上尚弥の衝撃ダウンへの“本音” 電撃再戦の可能性はあるか【現地発】
興味をそそられる井上とのリマッチの可能性は?
ネリ戦の最大のポイントを挙げるとすれば、やはり井上がプロ入り後では最大級のピンチにも慌てず、冷静に対処し、己を俯瞰して分析できた点だ。 完璧であれば素晴らしいが、必ずしもそうなるとは限らない。それゆえにいかなる展開にもアジャストする能力が大事になる。とくに“セカンドチャンス”を重要視するアメリカ社会では、失敗した後に上手く適応できる人間が讃えられる傾向にある。“クールボーイ・ステフ”もまたネリ戦での井上にそれを見たようだった。 前述通り、昨夏の井上戦からブランクを作っているフルトンだが、ようやく復帰戦が具体化してきている。今夏に予定される注目の次戦は一階級上のフェザー級で実施予定だ。 スーパーバンタム級の選手としては身体が分厚く、減量苦もよく知られていたフルトン。実はフェザー級も希望の体重ではないことを明かした。 「次の試合は126パウンドのフェザー級になる。本当は130パウンド(スーパーフェザー級)まで上げられたらよかったんだけど、ともあれ次は126だ。あまり先のことは考えすぎず、1戦ずつ戦っていくよ」 ただ、筆者との話を終えたあと、他のメディアの取材も受けたフルトンは、そこでは井上との再戦希望を改めて述べていた。真剣にモンスターとのリマッチを目指すなら、スーパーフェザー級に上げてしまうのではなく、フェザー級でタイトルを獲るのが最善の手段といえる。フェザー級王者として待ち受ければ、常に世界王座にこだわる井上陣営が対戦に興味を持つはずだからだ。 初戦の内容、結果を思い返せば、再戦でも「井上絶対有利」は動かし難く、リマッチは不要という声も出てきてもおかしくはない。筆者もそんな意見に同意したくなるが、それでも1階級上の体重でフルトンがどんな戦いをするのかに少なからず楽しみはある。 もともと“クールボーイ・ステフ”は、技術、スピードより、自身のボクシングIQに自信を持つ選手だった。井上対ネリ戦の感想を聞いても、確かにその片鱗は見て取れた。 そんなフルトンにとって自身のプライドをかけたリマッチは、自らの適応能力が問われる舞台になる。だからこそ、井上戦実現の可能性が高くはなくとも、ほのかに興味をそそられるのである。 [取材・文:杉浦大介]