ローマ近郊の洋館での思い出を描いたリスト晩年の傑作『エステ荘の噴水』【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
リスト『エステ荘の噴水』 除湿効果抜群の涼やかな名作
今日8月21日は、「噴水の日」です。 その成り立ちは、1877年8月21日から11月30日にかけて、東京・上野公園で開催された「第1回内国勧業博覧会」において、会場中央の人工池に日本初の西洋式の噴水が作られたことに起因します。 さて、噴水を描いたクラシックの名曲といえば、レスピーギの交響詩『ローマの噴水』や、プロコフィエフのバレエ『ロメオとジュリエット』の『噴水の前のロメオ』などが頭に浮かびますが、この季節に聴きたくなるのは、除湿効果の高そうなフランツ・リスト(1811~86)の『エステ荘の噴水』です。 リストが体験した、20代から60代までの旅の思い出を音楽で綴ったピアノ曲集『巡礼の年(全4集)』の、第3年第4曲に置かれた『エステ荘の噴水』は、ローマ近郊のティヴォリに建つ洋館での思い出を描いたリスト晩年の傑作です。 アルペジオを駆使した水の表現は、あとに続くドビュッシーやラヴェルなど、印象主義の作曲家たちに大きな影響を与えています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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