博多湾に立つ鳥居 日本書紀に登場する御島神社と新しいまち/福岡市
「あそこにいるのは、クロツラヘラサギですよ」。双眼鏡を首にかけた八坂哲雄さん(82)に背後から声をかけられた。肉眼では気づかなかったが、望遠レンズで見ると3羽の姿を確認できた。 4年ほど前に干潟の近くに転居し、海辺を散策するのが日課だという。10月中旬に和白干潟に飛来したというクロツラヘラサギ。現在は毎日のように、御島神社の祠(ほこら)の付近で羽を休める様子が見られるそうだ。
「干潟に集まる鳥にはまってしまいました」と八坂さん。観察しているうちにカメラの楽しさを知り、600ミリの超望遠レンズを三脚に据え、4時間ほど粘る日もあるとのことだ。
新旧が同居する空間
干潟では2023年度、シギやチドリ、ミヤコドリなど約100種類の野鳥が確認されている。都市と緑、海が調和する一帯は、御島神社を包み込むようにつくられた憩いのエリアのように感じられた。
アイランドシティにはマンションや戸建て住宅など6600戸が完成し、10月末現在で1万5700人が生活している。福岡市によると31年度に道路などのインフラが完成する予定で、健康管理の複合施設や、物流倉庫などの建設も進んでいるそうだ。
空がオレンジ色から濃い青色に変わっていく。仕事帰りだろうか、海上の鳥居に向かって手を合わせる人の姿があった。高層マンションの照明がともり始めると、鳥居は夜の闇に包まれていった。カメラのモニターには、近代的なマンション群と古い鳥居が干潟の先に"同居"する幻想的な空間が映し出されていた。
読売新聞