簡単に料理上手になれる! 料理のプロに聞いた「ピピッとコンロ」の便利な使い方
☑︎ 天ぷらがプロ並みに
僕は常日頃、「揚げ物こそ家庭で」と主張しているのですが、ピピッとコンロの温度調節機能を使えば、揚げ物に苦手意識のある人でもバッチリ美味しく揚げられるはず。 一般的な揚げ物なら180℃に設定して、ピピッと鳴ったら火が弱まるので、そこで食材を油に入れるだけです。するといったん油の温度が下がるので、火はボワッと強くなります。実に頼もしい瞬間です。 火はその後も勝手に強くなったり弱くなったりして設定温度前後をキープしてくれるので、誰でも確実にカラッとした、しかも焦げることなくちゃんと中まで火の通った揚げ物が作れるはず。天ぷら、から揚げ、フライ、春巻き、何でも来いです。
☑︎ 温度調節機能は揚げ物のためだけではない!?
フライパンを使って焼く調理の際も、実は温度調節機能がたいへん役に立ちます。簡単にその原理を説明しておくと、「焼く」という調理においては、150℃くらいからメイラード反応が盛んになり、こんがりおいしそうな焼き目が付き始めます。しかし200℃を超えると、それが急激に進行しすぎて、おいしそうな焼き目ではなく単なる焦げになる可能性が高まります。 なので、ホットケーキなどの糖分の多い焦げやすいものは160℃、ベーコンエッグやステーキなら180℃、という感じで設定すると、おいしくて見た目も綺麗な焼き物ができるのです。チキンソテーやハンバーグなど中までしっかり火が通りにくいものも、160℃設定で確実に、なおかつ香ばしく加熱できます。
☑︎ 温度調節機能マニアック編
どこに需要があるかわかりませんが、マニア向けにさらっと、応用編的な使い方をご紹介しておきます。 ホールスパイスのテンパリングは、180℃設定で。テンパリングは170℃以上で効果を発揮しますが220℃を超えるとやりすぎになる可能性が極めて高くなります。180℃設定でうまくいかなかったら、200℃設定までは上げても大丈夫。 アメ色玉ねぎは、150~160℃設定が便利です。完全放置というわけにはいきませんが、時折混ぜる程度でよくなります。上位機種だともう少し幅の広い設定があるようですので、その場合は(時間がかかりますが)それよりやや低い設定でもより均一な本格的な仕上がりになるはずです。 フライドオニオン、焦がし葱油、ラー油、あるいは鶏油やラードなど、最終的にたっぷりの油の中でじっくり色づくまで加熱していくものは、弱火にかけて設定温度180℃で完璧です。 最後に(超マニアックで)惜しい話。100℃以上150℃未満、つまり沸騰温度は超えるけど焼き色は付きにくい温度が設定できるとより便利だと思うのですが、残念ながら我が家のコンロにはその機能がありません。調べたところ、この温度帯が設定できる機種もあるようです。例えばビリヤニなんて、120℃設定ができれば失敗なく完璧に炊き上がるのですが……。これから購入を検討されるマニアの方はチラッと心にお留め置きください。 そんなわけでピピッとコンロは、料理のクオリティが向上し、うっかりな失敗も防げる、まさに文明の利器。もしもノーベル料理賞ができたら、ぜひ東京ガスさんに差し上げてほしいところです。
教えてもらったのは……稲田俊輔さん いなだしゅんすけ/料理人、飲食店プロデューサー。南インド料理店「エリックサウス」総料理長。鹿児島県生まれ、京都大学卒。和食、フレンチ、洋食、インド料理などさまざまなジャンルのメニュー監修や店舗プロデュースを手掛ける。著書に『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』(柴田書店)『チキンカレーultimate21+の攻略法』(講談社)ほか。新刊『個性を極めて使いこなす スパイス完全ガイド』(西東社)『ミニマル料理』(柴田書店)は2023年度レシピ大賞を受賞。