「イッカク猟の文化は消えようとしています」、捕獲枠に翻弄されるグリーンランド先住民
科学者と猟師の知識が同じ重みをもつように
最近では、イヌフイットの知識が以前より評価されるようにもなった。2023年にはグリーンランドの狩猟に関する法律が改正され、研究所が実施する個体数の評価に猟師の専門知識と観察結果を取り入れることが義務づけられた。決定の過程で科学者と猟師の知識が同じ重みをもつようになったと、グリーンランド漁業狩猟省のアマリー・A・イエッセンは話す。 「猟師は特定水域でのイッカクの分布や、イッカクが来る時期と去る時期、氷の状態が狩猟に与える影響といった情報を提供してくれるでしょう」。新たに生まれた子を何頭見たかも教えてくれるだろうと、イエッセンは付け加えた。 グリーンランドとカナダは2023年、北極海の開けた水域を共同で管理・保全する趣意書に署名した。これにより、イヌフイットは先祖代々の猟場の管理で、これまでよりも大きな権限を与えられるだろう。ひょっとしたら、カナダのエルズミア島にあった彼らの猟場の管理にも参画できるかもしれない。 ※ナショナル ジオグラフィック日本版7月号「海からの贈り物、グリーンランド」より抜粋。
文=グレブ・レイゴロデツキー(生態学者)