今や希少! JR「パノラマグリーン車」もう流行らない? 開発中の新型に採用なら30年ぶり
展望車は国鉄時代には実現せず
日本の鉄道車両で、明確に前面展望を指向した車両は、1961(昭和36)年に登場した名古屋鉄道7000系「パノラマカー」からです。それまでも半室運転台の車両などで前面展望を楽しめましたが、特急列車のウリとされたのは、これが初めてでした。 【画像】30年ぶりパノラマグリーン車か? 開発中の新型車両とは この少し前、国鉄が151系特急形電車に展望車を連結することになり、車両メーカーは「クイテ」「クイロテ」を先頭にした展望車を提案しました。「テ」は展望車の意味です。151系はパノラマカーのように、運転台を客室の上に配置し展望室を設ける構想でしたが、実現せずに縦1m×横2mの側窓を備えたクロ151「パーラーカー」となっています。 国鉄改革が行われる最中の1984(昭和59)年、キハ56系気動車を改造し、運転台越しの前面展望が楽しめる観光列車「アルファコンチネンタルエクスプレス」が登場すると、これが好評を博します。 こうした流れを受け国鉄は1987(昭和62)年、100系新幹線の後継となる「スーパーひかり」を「スーパーハイデッカーで、前面展望可能」とすべく、モックアップを制作しました。屋根まで少し延びた大きな側窓、前面展望可能な前頭部、テレビが付いた座席を備えたものでしたが、そのような構造にすると重量が増して270km/h運転が行えないことや、超高速での前面展望はバードストライクが怖いということもあり、断念されました。 しかし、そうした制約が少ない在来線特急では、展望室を取り入れてサービスアップを図る動きが加速します。観光用車両以外で、前面展望可能なJRのパノラマグリーン車には、どのようなものがあるでしょうか。
JR各社こぞって開発
1988(昭和63)年、発足したばかりのJR東海が381系特急形電車を改造し、運転台越しの前面展望が行える展望室を備えた「パノラマグリーン車」を、特急「しなの」用として登場させました。 381系のパノラマグリーン車改造は、翌年以降にJR西日本も特急「スーパーくろしお」「スーパーやくも」用として行っています。どちらも中間車両のグリーン車に展望窓付き運転席を後付けで接合したものですが、展望室と一般客席を区切って展望室の側窓を大きくしたJR東海に対し、JR西日本は客室部分はいじらずに、展望窓を備えた運転席を接合していました。 一方、JR九州は同じ1988年に、新造特急形電車である783系「ハイパーサルーン」の先頭車両を前面展望可能構造とします。783系では編成端に普通車とグリーン車が連結されていたので、グリーン車だけでなく、普通車でも前面展望が可能でした。 運転台のガラス上部にフィルムが貼られ、やや視界が悪いものの、2024年現在も最前列座席からはワイドな展望が楽しめます。側窓も非常に大きく、眺望性に優れた車両といえます。 同年に製造されたJR東海キハ85系気動車も前面展望が可能で、当初は普通車のみでしたが、1992(平成4)年の特急「南紀」用からパノラマグリーン車が登場しています。パノラマグリーン車は1994(平成6)年に登場した383系電車でも踏襲され、特急「しなの」で木曽路の美しい風景を楽しむことができます。 1990(平成2)年、JR東日本は特急「スーパービュー踊り子」用に251系電車を新造します。251系は編成端の普通車とグリーン車から運転台越しの前面展望が可能な構造でした。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は何度か乗車しましたが、シアターのように座席の位置が高められた展望席を備えているのに、最前列以外はあまり前が見えない設計を不思議に感じました。