Google、「公共の安全」を掲げ自社の独占を否定。お決まりの理論は今回も通るのか
記事のポイント 反トラスト裁判に直面しているGoogleは、公共の安全を守る義務を市場供給よりも優先する、と主張するお決まりの弁護戦略をとっている。 「プライバシーサンドボックス」導入にあたっては「ユーザーのプライバシー保護」を掲げ、英国の規制当局の理解を得ることに成功。 米司法省はGoogleがAIサービス「Bard」のリリースを遅らせた理由を問題視しているが、Googleは「ユーザーの安全のため」と主張している。 検索広告とディスプレイ広告の両方におけるGoogleの支配的な地位は複数の方面から激しい批判にさらされているが、現在進行中の反トラスト裁判で11月第1週にGoogleの弁護人の陳述が行われ、本件は新たな色彩を帯びることになった。 Googleは世論(「専門家の集合的な意見」といったほうが正確かもしれない)という裁きの場で批判を浴びている場合もあるが、コロンビア特別区などの管轄区域では、文字通り被告人席に座っている。 ただし、どの場合でも同じように見える点が一つある。Googleの弁護戦略だ。巨大オンライン企業であるGoogleは、責任ある企業市民として公共の安全を守る義務があり、それはいかなる市場供給義務より優先度が高いのだ、と主張しようとしているかのように見える。
Googleの弁護戦略がうまくいった例
たとえば、Google Chromeチームで長引いているプライバシーサンドボックス導入がある。これは、オンライン広告大手Googleが、サードパーティCookie廃止後も世界でもっとも高い人気を誇る同社のブラウザで行動ターゲティング広告ができるようにするための複雑な(一部には「神経がすり減らされる」という声もある)取り組みだ。 批判派が事あるごとに指摘するのは、その提案の現バージョンが、好意的に見ても不明瞭であるということだ。なかにはあまりに激しすぎる反論に、Googleのエンジニアたちが最初からやり直しを迫られた部分もある。 ある情報筋が米DIGIDAYに語ったところによると、最近開催されたPrebidのカンファレンスでは、開発がヒートアップするにつれてGoogleが「自分たちに有利な方向に傾いていくのではないか」という懸念が広がっていたという。 とはいえ「Chromeユーザーのプライバシーを守るため」というGoogleの主張に反論するのはなかなか難しいだろう。英国の競争当局(サンドボックス関連のあらゆる事項を事実上担当する国際規制機関)がGoogleの現在の方向性に青信号を出し続けているのは、これまでのところGoogleの戦術がうまくいっていることを示している。