公式戦初打席で決勝打 「ガラガラ声」の星稜の背番号20 センバツ
◇センバツ高校野球1回戦(18日、甲子園) ◇○星稜(石川)4―2田辺(和歌山)● 【2点打の瞬間】寺西投手は打球の行方追う 詰まり気味の打球が右翼手の前で弾んだ。2―2の九回、星稜の代打・東汰生(たいせい)が決勝の2点打。ベンチから仲間を鼓舞し続けてきた背番号「20」が厳しい試合の最後の最後、ヒーローとなった。 高校の公式戦で初打席。しかも、同点で最終回の1死一、二塁のしびれる場面で左打席に入った。でも、「ずっとベンチで大きな声を出し、自然と緊張がほぐれた」。 暴投で二、三塁となった後、カウント2―2から田辺のエース・寺西邦右(ほうすけ)の内角直球に反応した。詰まったが、体を回転させて振り切った分、低反発バットでも二塁手の頭を越えた。「打球は良くなかったが、勝利につながったのがうれしい」。仲間2人の生還を見届け、派手なガッツポーズで喜んだ。 星稜打線は三塁方向へインステップして投球に角度をつけてくる相手右腕に手を焼いた。映像で事前に確認していたが、打席に立ってみるとより角度がついて見えたという。試合を通じて、スイングの鋭さが自慢のクリーンアップはわずか1安打に抑え込まれた。 だが、昨秋の北信越大会を体調不良者が続出する中、控え選手の活躍で勝ち切ったように、星稜は層が厚い。全員が試合に出場する心づもりがあり、東も「遊撃側からボールが出てくることや、直球をゾーンに投げてくることが多いことをベンチで共有していたので、甲子園初打席でもしっかり対応できた」と言い切った。直前の九回1死一塁から安打で好機を広げたのも、代打で七回から途中出場した背番号「13」の中島幹大だった。 試合後のインタビュー。東の声はかれてガラガラだった。「ずっとベンチで大きな声を出していたので……。いつもこうです」。秋の王者の強さの源は、個の力ではなく、一体となれるチーム力にある。元日に能登半島地震で地元・石川が被災した苦難もありながら、星稜らしい戦いぶりで、山下智将(としまさ)監督に監督としての甲子園初勝利を届けてみせた。【大東祐紀】