認知症検査のCTとMRIの違い/医療ジャーナリスト・安達純子
「新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防」<11> 認知症といっても原因はいろいろある。患者数の最も多いアルツハイマー病は、脳にアミロイドβやタウというタンパク質がたまり、神経細胞が死滅して脳が萎縮していく。特に記憶に関係が深い脳の海馬のダメージが大きい。結果として、記憶ができなくなるなど認知機能が低下していく。 この脳が萎縮した状態は、医療機関のCT画像検査やMRI画像検査で映し出すことが可能だ。認知症に関連した臓器である脳以外でも、肺や心臓などさまざまな臓器で画像検査は活用されている。では、2つの違いとはなにか。 「CTとMRIは撮影原理が異なり、CTはレントゲンと同じエックス線、MRIは磁場と電波で撮影します。エックス線を利用しているCTでは短期間に何度も撮影すると、身体にダメージ(被ばく)を与える可能性がありますが、MRIは被ばくしません。また、CTは撮影角度が決まっていますが、MRIは撮影する角度がCTよりも自由で、認知症の脳の変化を診るときに活用しやすいと思います」とは、順天堂大学保健医療学診療放射線学科の後藤政実先任准教授。2024年7月、認知症に対し、AIを用いた脳容積解析ソフトウエアを新たに開発した同大と富士フイルムの共同研究のメンバーで、画像診断技術の専門家である。 「断面図や立体図だけでなく、脳の小さな区域ごとの容積でも解析できるのがMRIの特徴です。新しい認知症の薬が登場するなど医療が進展するときにも、CTと比べて何回も撮影可能なMRIによる脳容積解析は役立ちます。そのための研究を進めています」と後藤先任准教授は話す。