いじめの認知件数が全国的に増加 なぜ「再調査」されないのか 被害者の保護者が訴え
富山テレビ放送
2年前、富山市で当時、中学3年生の女子生徒が自ら命を絶ちました。 遺族は「いじめが原因だった」としています。 女子生徒の死から2年、いじめの認知件数が全国的に増え続けるなか、学校や行政の対応に「到底納得できない」とする被害者の保護者がいます。 その訴えに耳を傾けます。 *北部中 女子生徒の遺族の会見 2022年12月 「娘がいなくなってしまった事実を受け止めきれず、頭がおかしくなりそうですし、自分の内臓をえぐり取られ、手足をもぎ取られた気持ちで毎日心が張り裂けそうです」 おととし11月19日。 富山市の北部中学校に通っていた当時中学3年生の女子生徒が自ら命を絶ちました。 亡くなったのは、学校での「いじめが原因」とした遺族側に対し、市教育委員会が設置した調査組織は、いじめと自殺との因果関係を否定。 学校・教育委員会が適切に対応していなかったことは認めたものの、その原因や経緯は明らかにされませんでした。 *水谷敏彦弁護士 「(いじめの)『重大事態』を学校が見落とした。『なぜ、どうしてこうなったんだ』ということを調べてくれというのが(調査組織の)いちばん大事なミッションだったと思う」 いじめにより不登校となるなど(30日以上)深刻なケースに該当する「重大事態」。 その疑いがある時点で、学校側には、速やかに調査を行うことが義務付けられています。 しかし、北部中のケースでは自殺した女子生徒の在学中に「重大事態」として取り扱われることはありませんでした。 「なぜ学校は適切に対応できなかったのか」、明かされないままの報告書。 遺族側は、市長直轄の新たな組織で調査のやり直しを求めましたが、今年1月、市は「調査は十分に尽くされた」として「再調査をしない」結論を出しました。 いじめ防止対策推進法では、学校や教育委員会から調査結果の報告を受けた市長は、再発防止の観点などから再調査の必要性を判断することになっています。 市長への報告がなされる際に被害者側は「所見」を添付できることになっていて、再調査を求める訴えが盛り込まれることもあります。 先週金曜、富山市役所に向かった男性。富山市に住む、松岡さん(仮名)。 高校2年生の娘がいます。 娘が中学時代に受けたいじめについて、去年11月から2度にわたり市長へ再調査を求める所見を提出していました。 この日、市側から再調査実施の判断について説明を受けましたが、示された結論は、 「再調査はしない」「必要な調査は行われた」ことなどが理由でした。 *松岡さん(仮名) 「本来『重大事態』として認識すべきインシデント(出来事)がたくさんあったにも関わらず対応されなかった。『これは非違行為にあたります』と再三訴えていたのだが…」 松岡さんの娘は中学1年生のころからいじめを受けていました。2年生の秋には心的外傷後ストレス障害「PTSD」の診断を受け、不登校になりました。 *松岡さん(仮名) 「本当に生きる気力をなくしてしまったという感じになってしまったのがいちばんつらかった。『学校にも行けなくなってしまった自分というのは、もう生きている価値がない』と。『自分は最低な人間なんだ』と」 高校には進学したものの、今も精神薬を服用するなどPTSDの治療を続けているといいます。 *松岡さん(仮名) 「(PTSDの症状としては)いじめられたときの場面が本人の頭にフラッシュバックで思い出したくない場面が出てくる。(発作的に)ガーっと押されるような頭痛や、喉が苦しくなって気道が狭くなるような感覚がするときとか。いろんな発作に対応する薬を何種類も処方され常に携帯している」 在学時、いじめの「重大事態」にあたると訴えても学校側は取り扱わなかったといいます。 市教委が設置した調査組織の報告書には、校長による「今後のいじめ対策」も記載されていましたが、松岡さんの娘の事案を踏まえた具体的な再発防止策ではありませんでした。 先週金曜に市から渡された文書。 松岡さんが「再調査が必要」と指摘した複数の点に対し、「再調査はしない」と判断した市の見解が示されていました。 松岡さんは、「到底納得できない」として市長に再調査を再び検討するよう求めています。 *松岡さん(仮名) 「おかしかったこと、まずかったことは素直に認めて、次につなげなければならないと思う。でなければ、もうこんなやり方では、富山市からいじめがなくなることはないと本当に危惧している」 「重大事態」の調査について、上越教育大の高橋知己教授は「再発防止」の観点の重要性を強調します。 *上越教育大学いじめ・生徒指導研究研修センター 高橋知己センター長 「(報告書に)その事態が発生したときにどういう対処をしたのか。特に、例えば被害者へのケアや、もっと波及することを未然に防止するとか「再発防止」の大きなポイントになるがいろんな角度・視点から十分に書き込まれているのか。被害者側が(市長に)再調査をお願いする際に『(再発防止の)提言』の不十分さを指摘されている場合は少なくない。その辺が手を尽くされて検討されて書かれているかどうかということは(再調査にあたり)大きな判断材料になる」
富山テレビ放送