「生活保護裁判」全国に先駆け名古屋地裁で結審へ 原告指摘の“国の物価偽装”は認められるか
生活保護費が最大1割減額された生活保護基準引き下げの撤回を求めて、全国で受給者ら1000人以上が国や自治体を相手に訴訟を起こしている。裁判の過程では原告側の証人が国による不可解な数字の操作を「物価偽装」と指摘するなど、原告だけでなく専門家も強い疑念を示す。1月27日に結審し、今春にも全国でいち早く判決が出る見通しである名古屋地裁での公判の模様を通して、問題の真相に迫りたい。
ギリギリの生活、さらに削られ「限界」
厚生労働省は2013年から2015年までの3年間で、生活保護費のうち日常の生活費にあたる生活扶助費を670億円削減することを決めた。これにより生活保護世帯の96%で受け取る保護費が減額されることとなり、その下げ幅は平均6.5%、最大で10%だ。 これを不服として、東京や大阪をはじめ北海道から沖縄まで、全国29都道府県で1022人が訴訟を起こしている。愛知県では21人が減額処分の取り消しを求めて、名古屋市など4つの市を相手取り、各地の裁判所に提訴。同時に生活保護基準の引き下げを決めた国(厚生労働大臣)の責任を追及し、賠償を求める国家賠償訴訟も起こしている。 2019年10月24日には、名古屋地裁で原告の一人である70代の生活保護利用者の女性が法廷に立ち、こう証言した。 「お米は2合を1週間に分けて食べ、できるだけエアコンを使わないようにしています。新しい洋服や下着もこの1年は買っていません」 女性は10年ほど前に体調を崩し、仕事が続けられなくなったことから生活保護を利用し始めた。ひと月の収入は、年金と生活保護を合わせても10万円に届かない。もとより十分ではなかった生活扶助費が引き下げられてから、さらに家計を切り詰めるようになったという。 他の原告からも、食費や光熱費をギリギリまで節約する厳しい生活状況が語られ、憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されているとは言えない状況であると訴えた。 ある原告は取材に対し「生活保護利用者の多くは高齢者であったり、病気や障害があったりして働けない人。より健康に留意しなければならない人たちが、満足に食事をとることもできないのはおかしいと考え提訴した」と話した。「自分も生活費のやりくりは限界。裁判のための交通費を捻出するのも苦しい状況だが、これ以上弱い立場の人が不利益を被ることのないよう、絶対に負けたくない裁判です」と。