「休養」も頭をよぎった世界王者、宇野昌磨単独インタビュー 表現者として目指す極致、そして〝最後〟の五輪への思い
▽3度目の五輪「目指すならそれが僕の集大成」 フィギュアスケートの日本勢で、五輪3大会連続のメダルを獲得した選手はいない。次々と若手が台頭する競技で、第一線を走り続ける難しさを物語るデータだ。宇野も12月には26歳。3年後のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪について水を向けると「ちょっとまだ(先が)長過ぎる。今から考えるとつらくなっちゃう」と苦笑いを浮かべつつ「目指すなら多分それが僕の集大成というか最後になると思う」と打ち明けた。 ベテランの域に入ってきたことは自覚している。「この2年はトップに立てたけど、勢力図が変わって、もう僕には無理だなって思ったら、果たしてそれでも僕は続けられるのか」と不安がない訳ではない。だからこそ、銀メダルに輝いた2018年平昌冬季五輪、銅メダルだった2022年北京冬季五輪を「競技人生の通過点」としてきたのに対し、26年は「やると決めたなら、初めて五輪というものを目指すことになる」。3度目の五輪出場には、かつてない覚悟が求められると予感している。
▽優勝を期待される立場も…「すごくいい悩み」 アイスショーへの出演が続く中、既に新たなSPの振り付けを終えるなど、新シーズンへの準備は着々と進む。左足首故障からの復活を期す北京冬季五輪銀メダルの鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)やマリニンら若手から追われる立場であることに変わりがないことは理解している。 「世界選手権3連覇を期待されるのは分かってるし、それに応えたいっていう気持ちはある。でも、やっている側としては『1位以外、あんまり価値ないよ』って言われてるような感じがして、つらい立場だなとも思う」と本音も漏れる。 一方で、思い出すのは4年前。指導者不在で臨んだ2019年11月のフランス杯で8位に終わり、GPで初めて表彰台を逃した。得点を待つ「キス・アンド・クライ」で1人涙をこぼし「もうすぐ引退かな」と弱気になるほどのどん底を味わった。「期待されなくなり始めた時期があったことを考えると、これだけ優勝を期待される立場にいるのは、すごくいい悩み。少し肩の力を抜いて挑めたら、ちょうどいいのかな」。もがき、悩むことで一歩ずつ成長してきた日本のエース。足元をしっかりと見つめながら、シニア9シーズン目を迎える。