「休養」も頭をよぎった世界王者、宇野昌磨単独インタビュー 表現者として目指す極致、そして〝最後〟の五輪への思い
羽生結弦さんのプロ転向で新時代に入ったフィギュアスケート男子。大技クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を武器にイリア・マリニン(米国)が新風を吹き込む中、昨シーズンを通して主役を張ったのは宇野昌磨(トヨタ自動車)だった。グランプリ(GP)ファイナルを初制覇し、自国開催の世界選手権で日本男子初の2連覇を達成。ただ、栄光の裏には第一人者ならではの苦悩もあった。期待という名の十字架。休養も考えた冬。もがいた先に見えてきた光。東京都内で応じた単独インタビューで、赤裸々に思いを語った。(共同通信=藤原慎也) 筆者が記事に盛り込めなかった話を含めて音声でも解説しています。共同通信Podcast #34【きくリポ】を各種ポッドキャストアプリで検索いただくか、以下のリンクからお聞きください。 https://omny.fm/shows/news-2/34 ▽目標達成、それが苦悩の始まりだった
1年前の初夏、宇野は充実のオフを過ごしていた。「本当に湧き上がるようなモチベーションがあった。ただただ毎日、練習がしたいと思ってリンクに通っていた」。新星マリニンの台頭にも刺激を受け、4回転ジャンプの精度向上を図ろうと自然と練習にも熱が入った。 だが、シーズンが進むにつれて気持ちに変化が生まれる。昨年12月のGPファイナルのフリーでループ、サルコー、フリップ、トーループの4種類、計5度の4回転を着氷。前のシーズンから取り組んできた自己最高難度の構成を形にしたことで「僕が目標としてきたものが達成できてしまった」。そして、これが葛藤の「大きな要因になった」という。 ▽けがで追い込まれた王者、感情のこもった演技に 「できないことをできるようにするのではなく、できることをよりできるようにするのが難しかった」。練習では少しのミスが許せなくなった。頭に血が上ったまま、ジャンプを繰り返しては調子を崩す悪循環。羽生さんという追いかける背中も、闘争心に火を付ける強力なライバルもいない。「心の中ではそういう選択肢もあるかな」と次シーズンの休養が頭をよぎった。